「日本が大好き」ゴジラシリーズのファン ティム・バートン監督

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 体内にハチを飼う少年、鉛の靴を履いていないと宙に浮いてしまう少女…。公開中の映画「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」は主人公の少年が1943年にタイムリープ(時間飛躍)してそんな風変わりな子どもたちや保護者ペレグリンに出会い、成長していく物語だ。ハリウッドの鬼才ティム・バートン(TB)監督らしい幻想世界ながら現実社会に対する危機感も込められているようだ。

 -原作は2011年のベストセラー小説。映像化で工夫した点は?

 ★TB キャラクターの設定を多少いじりました。原作では火を吸う能力を備えたエマを、僕は宙に浮くことができる少女にした。その方が詩的で美しいからです。原作は古い写真からの着想で独創的な物語を作り上げていますが、文字と映像では物語の伝え方の違いがあり、そのまま模写するわけにはいかない。変更を加えても寓話(ぐうわ)的な要素や詩的な美しさなど原作のスピリットを損なわないよう心掛けました。

 -随分風変わりな子どもたちです。

 ★TB 周囲から「変わっている」とみられる人は実は芸術性が豊かな人や静かな人でいい人だったりします。中身は普通の人でね。僕自身、子どものころ怪獣映画を見ていたせいか「奇妙な子」などと扱われ、とても寂しく悲しい思いをした。何かと人々を分類しがちな社会に育ち、自分もそうだと信じ込んでいたところもある。でも、そう思われてもいいんだと受け入れたんですね。そんなポジティブなメッセージが伝わると思い、この映画を作りました。

 -そんな悩みからどうやって抜け出しましたか。

 ★TB 高校時代の美術の先生のおかげです。生徒一人一人の個性を認め、自己表現とは何かを教えてもらった。僕の力になりました。

 -映画ではおじいちゃんっ子の主人公ジェイクは過去に飛躍して祖父と出会い直し、運命が変わります。

 ★TB ジェイクは僕と重なるキャラクターです。僕の場合、祖母と特別な関係でね。10歳から12歳まで一緒に暮らして、映画の中のおじいさんとペレグリンを合わせたような存在でした。

 -移民排斥など異質な者に不寛容な風潮にも異議を唱える内容です。主人公が闘う邪悪な異能者ホロガーストはホロコーストのイメージですか。

 ★TB そうです。ホロコーストの語感にも怪獣の名前にも似てるでしょ? 現実と架空をうまく重ねたキャラクターです。社会の不寛容さは僕も感じている。そういうのは波があって今は悪い周期に入っていますね。

 -トランプ米大統領の登場をどう考えますか。

 ★TB 僕を怖いと思う人だっているくらいだから分からないけれど(笑)。彼の登場はショッキングで今まで目にしたことのない状況です。

 -そういう世相だからこそこの映画が上映される意義もありますね。

 ★TB そうだと思います。こんなことを予感して作ったわけではなく、偶然なんだけどね。

 -「君の名は。」などタイムリープを扱う映画がヒットする背景は?

 ★TB 実はタイムリープなど技術的なことや歴史的なことにはあまりこだわっていません。重要なのはキャラクターの目を通して物語を伝えることだから。僕自身、時間の管理がとても苦手で今日がいつかも分かってない。そんな僕がこの作品を作ったこと自体、愉快だと思っている人がいるくらいです。時間を巻き戻すとしたら? 今を生きることで精いっぱいです。

 -「ゴジラ」シリーズのファンですね。どんなところが好きですか。

 ★TB 特に1960年代の本多猪四郎監督の作品が好きで、怪獣だけど人間味を感じる。キャラクターの中に人が入っているからなのか、その造形、芸術性にひかれました。

 -今回の映画の終盤に1万円札が出てきます。日本がお好きなんですね。

 ★TB(大笑いして)日本は大好きです。あの部分は僕が書きました。日本で撮影したかったけれど、予算がなくて米国で撮ることになって残念! 日本の怪獣映画もアニメもたくさん見てきたし、日本に来て日本に恋して日本が大好きになった。日本は視覚的な刺激があり、クリエーティブな影響を与えてくれる場所です。

 ▼ティム・バートン 1958年米カリフォルニア州生まれ。大学でアニメーションを学んだ後、一時ウォルト・ディズニー・スタジオに在籍。「ピーウィーの大冒険」(85年)で長編デビュー。「バットマン」やジョニー・デップと組んだ「シザーハンズ」「チャーリーとチョコレート工場」など幻想的な作風が持ち味。2007年のベネチア国際映画祭栄誉金獅子賞。


=2017/02/19付 西日本新聞朝刊=

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