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身近な人の「違う顔」が怖い 映画「スプリット」監督 M・ナイト・シャマランさん

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 M・ナイト・シャマラン監督は出世作「シックス・センス」以来、「ラストのどんでん返し」というイメージが強い。全米3週連続ナンバーワンを記録した新作「スプリット」もまた意外なラストが待っていますが、ラストうんぬんよりも「一番怖いのはやっぱり人間そのものかも」と思わされてしまいました。

 -観客のどんでん返しへの期待に対するプレッシャーはある?

 ★シャマラン 特に意識はしていない。実際はラストをどうするかよりはドラマ全体の展開の方に重点を置いているから。ミステリーやサスペンス映画をやっていると最後に種明かしがあるという展開にどうしてもなるので、結果的にどんでん返しになることが多いということに過ぎないよ。

 -そのドラマの展開で今回一番気を使ったのは何でしょう?

 ★シャマラン 今作はいろんなジャンルを引っ張ってきている映画なので、そのバランスを見つけることに腐心した。まずメインのジャンルをはっきり決めなくてはいけなくてそれはスリラーだと思った。エンターテインメントとして単純に面白い要素を入れようとも思ったが、それはスリラーの要素を邪魔しない程度にとどめようと心がけた。

 -今回の作品は多重な人格を持つ解離性同一性障害の男が女子高生3人を拉致監禁する話ですが、着想はどこから?

 ★シャマラン 宇宙ものの作品「アフター・アース」も既にやったし、もう題材は開拓しきってしまっていて、最後にまだ開拓できるところがあるとすれば人間の脳なんじゃないかと思っているんだ。1歳から5歳ぐらいの成長期で、脳が未発達な状態に身体的な虐待、特に性的暴行に遭った人がなることが多い解離性同一性障害に一番興味を持った。

 -その多重な人格を演じ分けるジェームズ・マカボイさんの演技が見どころです。細かく演技の指示をしたのでしょうか。

 ★シャマラン 自分はかなり俳優をコントロールするのが好きな監督なんだ(笑)。脚本段階からそれぞれの人格に特定の性格を与えていた。子どもの人格のヘドウィグに「僕は赤い靴下を持っているんだよ」と言わせたり、危険な人格であるデニスが潔癖性だったり。半年以上の時間をかけてそれぞれの人格の特徴を練り上げた。一方で、ジェームズになぜこういう動きをするのか、と聞かれて初めてなるほどそういうことだったのか、とその人格の背景について僕自身が発見することもあった。癖やセリフの言い方はジェームズと一緒に作った部分も多い。

 -この役はジェームズ以外には考えられない?

 ★シャマラン そうさ。ジェームズはカメレオンのような人でいろんな色を持っている俳優。特に英語のなまりを使い分けられるんだ。彼はずっとイングランド人だと思ってたんだけど、実はスコットランド人なんだよね。彼との出会いは奇跡的。シックス・センスの子役のハーレイ・ジョエル・オスメントもそうだったけど、僕は奇跡のようなキャストに恵まれていると思う。

 -監督の映画を見ていると、怪物や幽霊なんかより人そのものが一番怖いと感じさせられます。

 ★シャマラン 他人が誰でも共感できるような恐怖が一番パワフルだと思う。例えば寝ているはずの子どもの部屋をのぞいたらそこに子どもたちがいなかったとか誰もいないはずの2階で足音がしたりとか、そういうものが恐怖のトリガー(引き金)になる。

 -実は私も身近な妻や友人の普段は隠している表情を見てしまった時はリアルに怖いんですが…。

 ★シャマラン きっとあなたは僕と趣味が似ているね(笑)。おっしゃる様に身近な人が全然違う顔を見せた時の方が、壁に血が塗られてるとか、怪物に遭遇するよりよっぽど怖い。だから映画では逆に日常的じゃない恐怖に導く時ほど慎重でなければならないと思っている。

 ▼M・ナイト・シャマラン 1970年8月6日生まれ。幼い頃から映画づくりを始め、16歳までに45本の短編映画を製作。ニューヨーク大学芸術学部在学中に脚本を書いた「Praying with Anger」(92年)がトロント国際映画祭で上映された。主な作品に「アンブレイカブル」「サイン」「ヴィジット」など。


=2017/05/14付 西日本新聞朝刊=

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