ただいま変身中です 1年8カ月ぶり新アルバムを発売 吉田山田

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 歳月を重ねた老夫婦を歌った「日々」がNHK「みんなのうた」で取り上げられ注目された2人組吉田山田。ぬくもりがある柔らかな曲を歌う印象がありますが、昨年11月、1年8カ月ぶりに出したアルバム「変身」は違った雰囲気に包まれています。2人の身に何が起きたのでしょうか?

 -1曲目「HENSHIN」は疾走感がある曲ですが、カフカの「変身」の一説が朗読されているのが印象的です。

 ★吉田 学生の時に「変身」を読んで、不条理さとあまりの暗さにびっくりして。その世界の雰囲気を今でも覚えているんです。アルバムのタイトルが「変身」と決まった時に、カフカの「変身」がなんとなく頭の中に出てきて、メロディーができて歌詞を入れる時にもう一度「変身」の冒頭を読んでみたんですよ。そしたら、曲のイメージに近づいた気がして。本編のどの歌詞の言葉よりもこの変身の一節が決まって、それに引きずられたぐらい。

 -吉田山田というと落ち着いて聞くことができる曲というイメージだったのですが、「HENSHIN」も含めアルバムは歌詞やメロディーに不安定さを感じさせる楽曲が多いように思います。

 ★吉田 今までのイメージから脱却したかった、というものもあると思います。真実の僕らを音楽で感じてもらいたいという思いはありました。

 -それが「変身」。

 ★吉田 今はほんとに変身中なんです。2019年の10周年の時に、自分たちがその記念のステージに立つにふさわしい人間になるための自分との戦いに挑んでいる最中。周りから求められているからそれを表現するというのではなくて、一人の人間として自分のことをちゃんと知って何が歌いたいのか、何を表現したいのか確認しないといけないと思ったんです。

 -「宝物」という曲はタイトルだけをみると代表曲の「日々」の路線のようですが、〈苛(いら)立ち遠ざけた宝物でした〉とやはりもやもやが残る歌です。

 ★山田 今までだったらもうちょっと伝わりやすい言葉もあったと思うんですけど、自分の心の形とちょっと違うなと思ったので、自分の感情に近い言葉を選びました。開けたくない扉を開けたような、なんかどぶに手を突っ込んだような気持ちで言葉を拾っていく感覚でした。これは家族に対する思いを形にしたんですが、親には聞いてほしくないと思うくらい赤裸々に作れたと思います。

 -〈夢の中でおしっこしちゃったよ〉と繰り返す「しっこ」や〈新しいお父さんが来た〉と始まる「化粧」は衝撃的ですね。

 ★山田 しっこの曲だからリリースはないと頭の中では分かっていましたが、頭に浮かんだものは形にしないと残らないと曲にしました。4年ぐらい前に作ってお蔵入りになっていました。

 ★吉田 事あるごとに山田がこの曲を出してくる。なんか山田のこの思いを大事にしてあげたいと思ったんですよ。山田って見た目もそうなんですけど、人とずれたところがある。そこが素晴らしいところでもあるんですが、これから、どんな曲を作っていくかと考えた時に、自分がどれくらいずれているかを学ばなければならない。人がどういう反応をするのか知らないと、と思って今回は形にしました。「化粧」は4、5年前からある曲ですが、山田がデモを上げてきた時から大好きな曲です。これも周囲を説得して入れた曲で、山田の心の歌です。

 -このアルバムは吉田山田がこれからどこに行くのか、聴く人がいろいろ考えることができる作品のようですね。

 ★吉田 ある意味ではバラバラだし、まとまりのない、ふ化する前の卵の中身みたいなものです。まだどの部分がどの部位になるか分かんない、でもそれって人の力にもなることもあるんじゃないかな、と思ってそれでよしとしたので。次の吉田山田どうなるんだろう、って期待感を持ってもらえたらうれしいですね。

 ▼よしだやまだ ギター&ボーカルの吉田結威(よしだゆい、1983年9月9日生まれ東京都出身=写真左)とボーカルの山田義孝(やまだよしたか、1983年12月13日生まれ東京都出身)の高校同級生2人組。2009年にメジャーデビュー。「日々」は13年12月にNHK「みんなのうた」で初放送されて以来、5度の再放送となった。


=2018/01/14付 西日本新聞朝刊=

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