「邦画=ティーン向け恋愛もの」に風穴を 初監督に挑戦した放送作家 鈴木 おさむさん

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 人気放送作家の鈴木おさむさんが映画「ラブ×ドック」で初監督に挑戦しました。インターネットのコンテンツ創作や舞台などジャンルにとらわれず活動の場を広げる鈴木さん。初監督作では「邦画=ティーン向け恋愛もの」という状況に風穴をあけることを狙ったそうです。

 -どういう経緯で自らメガホンを取ることになったのでしょう?

 ★鈴木 最初はWEBで恋愛もののショートムービーを作って、その総まとめで映画版を作ってほしいというオファーだった。僕に来るオファーは、脚本を書いて、というのがもちろん多いんですが、今回は恋愛映画。恋愛ってそれぞれ個人の主観が強いでしょう。脚本書いた後から監督を決めると、その監督ともめるな、と思った。映画って脚本書いた後にもめて企画がなくなることも多く、自分が撮る方が早い、と。50代に入る前に新しいことに挑戦するのもいいかもとも考えた。

 -恋愛にまつわるデータを集めて分析、研究するクリニック「ラブドック」を舞台回しに使って、ラブコメディーにした狙いは?

 ★鈴木 僕は放送作家として「ココリコミラクルタイプ」(2001年から07年に放送されたバラエティー番組)というテレビ番組の再現コントを手がけていましたが、特に恋愛系のコントが多くて、毎週作っていた。その後、妻(森三中の大島美幸さん)との新婚生活をつづった「ブスの瞳に恋してる」が映画化されてヒットしたのもでかくて、恋愛相談されることも多くなり、恋愛ものには得意意識があった。キラキラ映画(ティーン向けの主に恋愛を扱った邦画)が多く作られるようになって10年以上が過ぎているんですよね。最初にそうした映画にはまった10代、20代も既にアラサー、アラフォー。もうその世代はティーン向け恋愛映画では満足しない、と思って。

 -確かに欧米はテレビドラマから映画化もされた「セックス・アンド・ザ・シティ」シリーズやウディ・アレン監督の映画など大人向けの恋愛映画は多いのに、日本は少ないですね。

 ★鈴木 そこに風穴をあけたかった。日本はどんなジャンルでも、誰かが穴を開けると急に雪崩を打ってそっちにいく。小さい穴でもいいから開けたかった。

 -今、福岡市内ではアートアクアリウム展が開催中(16日までJR九州ホール)ですが、映画の中に繰り返し出てくる金魚の水槽のイメージが印象的でした。

 ★鈴木 放送作家として培ってきた人脈を使って、製作の予算規模以上にスケールの大きな映画に見せたかった。アートアクアリウムアーティストの木村英智さんとは旧知の間柄で、協力してもらった。水槽から水のイメージがどんどん広がり、吉田羊さん演じる主人公の飛鳥が、恋におぼれかけても必死に生きようとしているイメージと重なっていった。

 -主人公が途中で自分の恋愛を実況アナウンサーと解説する場面や、卓球バーでケミストリーの川畑要さんの歌に乗って展開する場面など、放送作家ならではのコミカルなアイデアも満載でした。

 ★鈴木 僕自身が飽き性なので一個の恋愛をくっついて離れたなんだと、2時間も描き続けるのは間がもたないと思って、ちょっとふざけたり、ポップな場面も挿入した。卓球シーンは岡崎体育さんのPVみたいに作れたら面白いなと思ってやってみたんです。

 -最近はインターネットのコンテンツプランナーの育成に力を入れるなど活動の幅がさらにどんどん広がっていますね。

 ★鈴木 テレビってある程度の年齢以上の人に向けたエンターテインメントになってしまっている。放送作家の仕事ではいい時代を経験させてもらったけど、その経験を基に急成長のネット業界でもいろいろ挑戦したい。AbemaTVでは、ベンチャー企業を題材にした連続ドラマの脚本を手がけました。今、3カ月間自分の時間を費やすとしたら、見る人はテレビより少ないかもしれないけど、ネットのコンテンツを作るのに費やした方が、何か新しい穴が開くかもしれないというワクワク感がある。過去のキャリアがあるからこそできることを新しい媒体で試したい気持ちがあります。

 ▼すずき・おさむ 1972年4月25日生まれ。千葉県出身。大学在学中に放送作家デビュー。多数のバラエティー番組の構成を手掛け、ベストセラー「ブスの瞳に恋してる」などのエッセーや小説を執筆、ラジオパーソナリティーや舞台の作・演出でも活躍中。脚本の代表作は映画「ハンサム★スーツ」「新宿スワン」、ドラマ「奪い愛、冬」など。

=2018/05/12付 西日本新聞朝刊=

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