池松壮亮、髪の毛食べた 映画で狂気感じる怪演

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 公開中の映画「君が君で君だ」(松居大悟監督)は3人の男が自分の名前を捨ててヒロインの好きな人物になりきり、10年間陰からひたすら彼女を追い続ける物語です。3人のうちの1人を演じる池松壮亮さんは尾崎豊になりきって隣のアパートから彼女の様子を観察。その真剣なまなざしから狂気すら感じさせる怪演ぶりが見ものです。

 -10年間追うって、もうストーカーですね。

 ★池松 満島真之介さん演じるブラピ(ブラッド・ピット)、大倉孝二さん演じる坂本龍馬、そして尾崎は好きな人に会おうともせず遠くから見てるだけで、実は彼女とそこまで顔を合わせていないんです。好きな人と一緒にいる時間がロマンチックだとみんなが思っている昨今、好きな人を思っている時間こそがロマンチックだと言い切る松居監督はやはり面白いですね。

 -松居監督とは同じ福岡県生まれ。劇中は博多弁ですね。

 ★池松 今作は監督初の完全オリジナル作品。やっぱりオリジナルって自分の内側を彫った作品になってくる。標準語の映画と方言の映画では色が変わってくるんですけど、少しだけ福岡の色を入れたかったみたいでそうなりました。

 -ヒロインの髪の毛を食べるシーンがあります…。

 ★池松 あれは人毛です。監督、助監督と打ち合わせしていた夜中3時ごろに僕が「本物食うよ」って言ったらしいんですよ。現場でも本当に人毛しか用意されてなくて。でも僕全く記憶なくて、「俺は食べるとか言ってない。あり得ない」って助監督とけんかしました(笑)。

 -エキセントリックな役が私生活にまで影響することは?

 ★池松 引きずりはしないけど出会った映画や役の意味は考えます。僕は1990年生まれで尾崎豊は92年に亡くなった。2年しかかぶってないけど小さい頃から父親に歌を聞かされていて、最初に覚えたのは劇中でも歌う「僕が僕であるために」。彼は27歳になる前に亡くなって、僕は27歳になってすぐこの映画にクランクインした。だから何というか、自分がすごく影響を受けたであろう尾崎豊にまつわる役をやるってなった時に、大げさに言うと「生きろ」と言われた気がしました。

 -2年前には映画「ラスト サムライ」で共演したトム・クルーズさんと13年ぶりに再会したそうですね。あの映画から随分たったなあという実感は?

 ★池松 ありますよ、ちっちゃかったんで(笑)。彼は映画が日本で公開されるたびに東京に来て宣伝活動しているけど、イベントに僕を必ず招待してくれるんですよ。とても律義な方です。でも僕はずっと会いたくなかった。プロとして向き合えるようになるまでは生半可な気持ちで会えないと思って。ところが「ラスト-」を撮った監督と彼の再タッグがあったんです。それで会いに行ったら「いろいろ聞いてるよ。頑張ってほしい」と言われました。

 -子役当時はこのまま俳優を続けると思ってた?

 ★池松 全く思ってなかった。小中高と野球漬けの日々でしたから。新庄剛志さんが作った長丘ファイターズに入ってて、県1位は当たり前だったしプロ野球選手になりたいと思ってました。

 -野球をやりつつお芝居も。小さい時から忙しく過ごしてたんですね。

 ★池松 今の子役の子たちってものすごく教育されてる。しっかりあいさつができて相手の目を見て話すし、本当に整った大人のようなお芝居をするんですよね。そんな中、僕は「ラスト-」のオーディションで監督に「今日は来たくなかった。野球の試合を休んで来たんだ」って言って。それで「君はイチローになりたいのか?」と聞かれて「なりたい」と答えた。そしたら受かった。そんな少年でした。

 -主演だけでなく2番手3番手、それ以降と役の幅が広いです。

 ★池松 芝居は人からやらされるもんじゃないと思って今までやってきたので、自分がこの役をやったら面白いと見込めるのであれば主役に限らずやりたい。東京でも福岡でも勝負できる映画を、そして見る人にちゃんと届くものを目指したいです。

 ▼いけまつ・そうすけ 1990年7月9日生まれ、福岡市出身。2001年に劇団四季「ライオンキング」のヤングシンバ役でデビューし、03年に映画「ラスト サムライ」に出演。「夜空はいつでも最高密度の青色だ」(17年)「万引き家族」(18年)など映画作品のほか、数々のドラマにも出演している。今年は映画「散り椿」や「斬、」などの公開も控える。

=2018/07/21付 西日本新聞朝刊=

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