十兵衛役? 冗談かと思った 博多座で「魔界転生」主演 上川 隆也さん

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 奇才・山田風太郎の伝奇小説を舞台化した「魔界転生」が10月、博多座で上演されます。根強いファンが多い原作は、映画や舞台、漫画などに広がり、メディアミックスの草分けのような作品。柳生十兵衛役で主演する上川隆也さんも大ファンだそうで、意気込みは半端ではありません。

 -役が決まった時の感想は。

 ★上川 冗談かと思いました(笑)。「魔界転生」の柳生十兵衛は自分のところに回ってくるべきお鉢ではないと思っていたので、正直驚きましたし、その報告を疑いました。

 -映画は1981年版が千葉真一さん、2003年版が佐藤浩市さんと、名だたる俳優が十兵衛を演じています。プレッシャーはありませんか。

 ★上川 ないといったらうそになります。けれど、言葉はちょっと砕けますが、気にしててもしょうがない。それぞれの作品に大いなる敬意を払いつつ、僕なりの十兵衛を演じさせていただこうと思います。

 -博多座への出演は初めてだそうですね。

 ★上川 寡聞ですが、歌舞伎にもストレートプレイ(通常の演劇)にもミュージカルにも、いかなる形態の演劇にも対応できる九州で唯一の劇場だと伺っています。どれほどの風景が板(舞台)の上に広がっているのか。役者として(心が)たぎらざるを得ません。

 -作品ゆかりの地となる長崎・島原の潜伏キリシタン関連遺産は世界文化遺産に登録されました。

 ★上川 巡り合わせを感じます。思い上がりを承知で申し上げるなら、この作品は今年、上演されることがどこかで決まっていたのではないかと思わせてくれます。本作は博多座がスタート。博多で箔(はく)を付けて、東京、大阪へとこの物語を運んで行きたい。

 -徳川幕府の弾圧への復讐(ふくしゅう)を誓う天草四郎(溝端淳平)が妖術で泉下の剣豪を転生させます。よみがえってほしい人はいますか。

 ★上川 小津(安二郎)監督がもし平成の世によみがえられたら、どんな映画を撮るのか見てみたい。もしオファーが頂けたら、跳び上がらんばかりの話だと思います。「東京物語」など、画の美しさにやられるんです。詩情と言うんでしょうか。もちろん、そうした作品を撮られる方は現在もたくさんいらっしゃいますが、それとはひと味違う小津ワールドが平成の世でどうなるのか。あくまで妄想ですが。

 -役者を目指したきっかけは。

 ★上川 お芝居をやろうと思った動機と役者になろうと思った動機は別なんです。そもそもは学生時代に始めたアルバイトでした。ある劇団がスタッフを募集していて、興味本位で応募したんです。それが小学校や中学校を回る劇団で、子どもたちに見せることが素人ながら楽しくて、お芝居をやりたいと思いました。ですが、結局お芝居がやりたいだけで、何になりたいというような志は伴っていませんでした。

 転機はNHKの「大地の子」。仲代達矢さんと朱旭さん(中国)というとんでもない俳優を目の当たりにし、「役者はすごい」と打ちのめされたんです。ここで初めて役者になりたいと思いました。ご一緒してると、自分が意図していない領域にいざなわれるんです。そんな経験をしたことがなかった。ありていに、役者というもののすごさを思い知らされたんです。どんなにあがいても、お二方の高みに上れるとは到底思えないんですが、僕もある種の高みに行けるんじゃないか。少しずつ、一歩ずつ歩み続ければ見える風景があるんじゃないかと思っています。

 -プロフィルによると、小型船舶操縦士の特定操縦免許をお持ちだそうです。船長ができる資格のようですが、なぜ取得したのですか。

 ★上川 小型船舶の一級免許を取得した際、ある意味勢いで取りました。いつかお芝居が糧とならなくなった日に、つぶしの一つにはなるかと思います(笑)。

 ▼かみかわ・たかや 1965年生まれ、東京都出身。89年、演劇集団キャラメルボックスに入団し、2009年の退団まで看板俳優として活躍。95年、ドラマ「大地の子」の主役に抜てきされ注目を集めた。ドラマ「功名が辻」「遺留捜査」、舞台「ヘンリー六世」など数多くの作品に出演している。「魔界転生」は10月6~28日に上演。

=2018/09/15付 西日本新聞朝刊=

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