岡田准一「見たことのない殺陣」要求され…主演作「散り椿」の撮影秘話

 直木賞作家、葉室麟さんの小説を映画化した「散り椿(つばき)」が公開中です。不正を告発し、藩を追われた主人公・瓜生新兵衛を演じたのは岡田准一さん。清廉な生きざまを好演しただけでなく、殺陣作りにも関わったそうです。作品について、昨年逝去した葉室さんとの思い出を交えながら語ってくれました。

 -黒澤明さんの撮影助手も務めた木村大作さんが監督です。直接オファーを受けたそうですね。

 ★岡田 出演した「追憶」(2017年)で大作さんがカメラを担当して、撮影が終わった時に言われました。原作を読んでいて大好きだったのと、お断りすると二度と大作さんの作品に出られないと思って(笑)

 -監督の印象は。

 ★岡田 かつての時代のエネルギッシュさがある。ものすごく怒鳴りますけど、それは良い絵を撮るため。昔の逸話とかも面白くて大好きです。

 -逸話?

 ★岡田 映画「八甲田山」(1977年)の時、雪山で結構むちゃして撮影したら、夜中にキャストに馬乗りにされて殴られたという伝説があります。そのくらいこだわったのだと思います。

 -今回はどうでしたか。

 ★岡田 「追憶」の時は雰囲気にのみ込まれて受け身だったのを反省しました。今回はおこがましいですけど大作さんの友達になりたかった。しっかり戦える存在に。一発撮りの緊張感、怒鳴り声もあるのですが、大作さんは楽しんで撮影されていました。

 -妻の篠を亡くし、友の榊原采女(うねめ)へは嫉妬心も抱く。それでいてセリフは少ない。新兵衛はどのような印象でした?

 ★岡田 自分を高めているし、野に放たれた強さもある。一方で弱さもある。懐の深い、重い人。そこを意識して演じました。

 -エンドロールで殺陣にクレジットがあったのには驚きました。

 ★岡田 最初うまくいかない時に、大作さんから「准ちゃん、どう思う」って聞かれて、やりとりするうちに参加しました。

 -「見たことのない殺陣」を要求されたとか。

 ★岡田 見たことないかは分からないけど、アクションに、僕がやっている武術とか格闘技をどれだけ混ぜられるのかを考えました。どちらか一方ではだめ。それが自分の強みなので。

 -采女とのしゃがんで打つ殺陣は見応えありました。

 ★岡田 殺陣は美しさを探す作業でした。撮影時、僕が篠を思いながら一人で練習していると、現場に来られた葉室さんがその風景を見てすごく喜んでくださった。体で語ることは意外と雄弁に伝わったりするんです。

 -映画全体を包む、静かで落ち着いた空気感も印象的です。

 ★岡田 京都ではなく、富山などで撮りました。大作さんは「京都だとみやびになっちゃう」と言う。撮りやすいのは京都なんだけど、映り込むものが優雅になってしまう。僕の衣装も地味ですけどすごくこだわっている。色味、質感とか。それが新兵衛の重さを出してくれています。

 -体で語る演技について木村監督は「高倉健さんをほうふつとさせる」とおっしゃっていました。

 ★岡田 リップサービスですよ。健さんファンに否定されるので、個人的には勘弁してほしい(笑)。昔はスタッフがほれるようなスターがいたけど、今はそういう時代ではない。でもこの映画はかつての時代の薫りがするんです。エンタメに走りすぎる今、美しさを見つめる今作が受けてくれたらという願いはあります。

 -葉室さん原作の映画「蜩(ひぐらし)ノ記」(14年)では主人公から影響を受ける若者を演じました。今回は若い侍に影響を与えます。ご自身の成長もあるのですか。

 ★岡田 自分では分かりません。ただ、同じ葉室さんの作品で、教えられる側と背中を見せる側をやれた縁を感じています。葉室さんは「僕の作品ならどれでもやっていいですよ」って言ってくれました。冗談だとしても作家さんからそう言ってもらえるのは幸せだった。30代後半でいろいろできる年齢と感じています。周りも、自分もひりひりする仕事をしていきたいです。

 ▼おかだ・じゅんいち 1980年、大阪府生まれ。95年、アイドルグループ「V6」としてデビュー。主なドラマに「木更津キャッツアイ」「軍師官兵衛」。映画では「永遠の0」「蜩ノ記」「関ケ原」などのほか、木村大作さんが撮影を担当した「追憶」で主演を務めた。

=2018/10/06付 西日本新聞朝刊=

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