フラメンコギターの豊かさに気付いた 日本スペイン外交樹立 150周年記念アルバムリリース 沖 仁さん

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 今年は日本とスペインが外交関係を樹立して150周年。これを記念したアルバム「Spain」をフラメンコギタリストの沖仁さんが10月末にリリースしました。「カルメン」や「アランフェス協奏曲」など“いかにも”という曲ばかり。これまで何度も音源化してきたように思われますが、意外にもスペイン作品集は初めてだそうです。

 -なぜ今までスペイン楽曲集を出さなかったのですか?

 ★沖 思い付かなかったですね(笑)。150周年ということがもちろんきっかけですけど、移籍したレコード会社の方から「『スペイン』というテーマでやってないということは逆にラッキーですね」みたいなことを言われましたし、灯台下暗しというか。こういうのはスペイン人も割とやっていないんです。

 スペイン音楽の中でもフラメンコというのは異色で、完全に独立した分野としてあるんです。アルバムに入れた「カルメン」や「アストゥリアス」はクラシック寄りの作品で、フラメンコの人がクラシックをやるというアプローチはなくはないけど、すごく少ないですね。やはりすごく保守的で、フラメンコの伝統をものすごく重んじ、そこにものすごく縛られる。だから平気で飛び越えられるのはむしろ僕ら外国人だったりするんですね。

 -初めて録音した曲はどのようなものがありますか。

 ★沖 まず最初のカルメン。スペイン舞曲第1番も初めて。「アマポーラ」も「アストゥリアス」も。「禁じられた遊び」はやったことがあります。

 -「アランフェス」や「アルハンブラ宮殿の思い出」はクラシックのコンサートで聴くものと違った印象の曲になっています。

 ★沖 クラシックでは作曲家の意図通りのものを弾かれることが多いと思いますが、こちらはそれを元にフラメンコなりにアレンジしてフレーズをどんどん変えています。

 -フラメンコなり、とは?

 ★沖 僕の手法でいうと、まずアレンジをフラメンコのリズムに置き換えます。クラシックはもうちょっとゆったりしていて、パーカッションがあんまり入ってこないと思うんですけど、そこをリズミックで、踊れるように。やはりフラメンコはダンスミュージックなので。基本の旋律は曲によってなるべくそのままにしていますが、フラメンコギターでしか弾けない弾き方もあるので、それを生かそうとする時は細心の注意を払ってやっています。スペインの作曲家はフラメンコを意識してい書いているところもあるので、喜んでくれているんじゃないかな、と思っています。「アランフェス」を書いたロドリーゴが聴いたら面白がるんじゃないかな、とひそかに期待しているようなところはありますね。

 -スペインの曲が続いた後に出てくる「さくらさくら」が印象的です。

 ★沖 この曲は割といろんなライブでいろんな形で演奏していた曲です。ライブをやりながら「こういうふうにやるとほんとに琴みたいなだな」と弾きながら発見したりして、だんだんこういう形に落ち着きました。締めに入れた理由は、日本とスペインの外交関係ということだったから。日本とスペインの融合という意味で、スペインの街を旅して最後に日本に帰ってくるストーリーにもなりますしね。

 -12月には福岡市でライブもありますが。

 ★沖 フラメンコギターの豊かさを僕自身もアルバム制作過程で気付かされたし、それをもっと掘り下げようとしていろいろ試行錯誤したんですね。フラメンコというのは一般的に激しくかき鳴らすというイメージがあると思いますけど、決してそれだけではないと感じてきて。メロディーを歌い上げることもできる。そうすることで、自分なりに前よりもギターの可能性や音を鳴らせるだけで満たされるような気がしていて。自分が満たされる、幸せになれる、それをお客さんにも伝えたいな、と思いますね。

 ▼おき・じん 1974年長野県生まれ。14歳から独学でギターを始め、高校卒業後カナダで1年間クラシックギターを学ぶ。フラメンコギターは20歳ごろから。2010年7月、スペイン三大フラメンコギターコンクールの一つ「ムルシア“ニーニョ・リカルド”フラメンコギター国際コンクール」国際部門で日本人初優勝。福岡でのコンサートは12月15日午後5時から、電気ビルみらいホール。BEA=092(712)4221。


=2018/11/10付 西日本新聞朝刊=

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