名脇役「キャラクターは時計の歯車」 「アリータ:バトル・エンジェル」に出演 クリストフ・ヴァルツさん

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 ジェームズ・キャメロンさんが製作・脚本を担当したSF大作「アリータ:バトル・エンジェル」が公開されています。原作は日本の漫画。3Dや最先端映像技術を駆使した近未来の映画ですが、クリストフ・ヴァルツさんの渋い演技も光っています。世界的に評価が高い名脇役が演技論まで語ってくれました。

 -原作は木城ゆきとさんの漫画「銃夢(ガンム)」です。お読みになったことはありますか?

 ★ヴァルツ もちろん読みました。でも、映画出演が決まった後で読んだんです。私が無知だったというか、原作漫画の存在は知っていたけれども、漫画自体あまり読まないので。

 -日本に来たのは初めてだそうですね。日本の景色は漫画や映画と重なるものはありますか。

 ★ヴァルツ (取材場所は東京都内ホテルの49階)今まさにこの外の高層ビル群を見ているだけで「信じられない」という感じです。漫画、映画の世界はもっと信じられないのだと思う。ただ、上から眺めているだけでは本当の日本の印象は分からない。地上でいろいろ散策してみたいです。

 -映画は、ユートピア(理想郷)とは反対の「ディストピア」もの。300年前のサイボーグ「アリータ」を復活させるイドを演じます。脚本からどんな役作りを考えましたか。

 ★ヴァルツ 私は脚本を物語のために読み、キャラクターのために読むことはしません。「どういう物語なのか」と問い掛け、そこから自分の役を理解していくんです。キャラクターは時計の一つの歯車でしかありません。歯車が欠けたら時計が動かない。もし動くのならその歯車は必要ない。この考え方が私の脚本との向き合い方です。

 -イドは正義のヒーローだが、心に傷がある。これまでに出演したタランティーノ作品で演じたような「悪党かな」と思わせるシーンもあります。

 ★ヴァルツ 全ての人には光と闇がある。極端な場合もあるし、その比率は人によって違う。キャラクター作りで面白いことはその比率を考えることです。私たちが人と接する時、うわべから印象を得るでしょ。逆を言えば、自分が人に対して与えたい印象がうわべに現れる。でもそれはどちらかというと光の部分で、当然内側には闇の部分も持ち合わせている。キャラクターを発見していく上で興味深いのは、大きな部分から細かい部分まで光と闇を見つけていくこと。闇の方が見つけるのは難しいんですけどね。

 -今作はジェームズ・キャメロンさんの肝いりの映画です。現場でどんな話をしましたか。

 ★ヴァルツ そこまで深く掘り下げては話していません。要点だけって感じですね。ジェームズは1990年代に映画化の権利を獲得するなど情熱を注いだ。でも「アバター」の大ヒットで、それが一つの産業のようになり時間が割けなくなった。それでも映画にしたいという思いがあったので、親交があったロバート(ロドリゲス監督)に託した。まとめていた600ページのメモを渡して、ロバートはそれを自分のものにした。ジェームズは見守ってくれてたけど干渉はしなかった。

 -最先端技術を駆使していますが、映像合成用のグリーンバックは使っていないとか。

 ★ヴァルツ いわゆる昔ながらのセットを使いました。CGで加えられたものもあるけど、建物の2階までほとんどが実物。細かいところや割れ目など本当にアート作品のようで、見るたびに何か新しい発見があるほど緻密。その職人技が素晴らしかったし、とても興奮する場所でした。

 -SF、アクション、親子の物語などいろいろなテーマをはらんだ作品です。なかでも印象的だったのがサイボーグと人間の共存。未来を示唆するようなテーマですがどう考えますか?

 ★ヴァルツ うーん。映画に出てくるような体のある部分をサイボーグと交換しますかと聞かれても私は答えられない。ただ、体が不自由な人にとってはこういう技術があれば素晴らしいし、私はたたえたいですね。

 -続編があるような印象も受けました。期待していいですか?

 ★ヴァルツ わたしが決めることではありませんので(笑)。

 ▼クリストフ・ヴァルツ 1956年生まれ。オーストリア出身。77年に俳優デビュー。2009年、クエンティン・タランティーノ監督の「イングロリアス・バスターズ」で本格的にハリウッド進出。冷徹なナチス将校役を演じてアカデミー賞助演男優賞を受賞。同じくタランティーノ監督の「ジャンゴ 繋がれざる者」(12年)では2度目のアカデミー賞助演男優賞に輝いた。

=2019/03/02付 西日本新聞朝刊=

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