見方が変わる、変わらない作品 劇団四季「ライオンキング」俳優 青山弥生さん

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 1998年に東京で初演し、今なお無期限ロングランを続けている劇団四季のミュージカル「ライオンキング」。24日からは、約10年ぶり3度目となる福岡公演が、キャナルシティ劇場(福岡市博多区)でスタートします。日本公演が始まった年から出演している俳優、青山弥生さん=宮崎県延岡市出身=に、人々の心を引きつけてやまない作品の魅力を聞きました。

 -ライオンキングと出合ったのは。

 ★青山 初めて観賞したのは、アメリカのブロードウェーです。日本公演が決定した後で、どうしても見たくて、何とかチケットを入手しました。雪が降る中、5時間並んだことは今も鮮明に覚えています。グラマラスな役者が、自在に動物のパペット(人形)を動かす迫力に圧倒され、日本人には到底できる動きではないと当初は思いました。

 -好きな場面は。

 ★青山 ライオンの子シンバが仲間とともに成長していく物語ですが、自分のせいで父を亡くしたと苦しみながらも、前を向く姿は共感する部分があります。悩むシンバに、年を取った呪術師のヒヒ、ラフィキが「彼はお前のなかに生きている」と導くシーンが好きです。命令するわけではなく、そっと手を引くような人って、すてきですよね。

 -そのラフィキ役を演じてきましたが、苦労したことは。

 ★青山 20年前、ラフィキ役を引き受けた当初は40代前後でした。年老いた動きに近づけるために、両腕と両足の4カ所に計10キロの重りをつけて稽古をしていました。子役以外の出演者で唯一、顔のマスクやパペットがないので、表情や体全体で表現しなければなりません。現在は、特訓の成果か、時間の経過のせいか、重りは必要ありません(笑)。

 -ラフィキ役と言えば、冒頭で独唱する「サークル・オブ・ライフ」で、サバンナの世界へ導くシーンが印象的です。

 ★青山 冒頭は、シンバが誕生する喜びを、アフリカのズールー語で歌っています。大きな世界観としては、大地や天の神様に対する感謝の思いを込めています。目頭を押さえるお客さまもいますし、私もこの曲で涙を流したことがあります。

 -なぜ、20年以上も続く人気公演なのでしょうか。

 ★青山 一つとして欠けてはならない動物たちのパペットや、アフリカのビートを刻む音楽の完成度の高さを感じます。俳優としてだけではなく、稽古のアドバイスをする立場になりました。より客観的に見られるようになり、インドネシア影絵や歌舞伎などアジアの伝統芸能を取り入れた表現など、何度見ても新しい発見があります。福岡公演の出演は未定ですが、一人でも多くの人と、この感動を共有したいですね。

 -青山さん自身も、心境の変化はありましたか。

 ★青山 5年ほど前、父を亡くしました。その後、ブロードウェイ公演15周年記念でアメリカの舞台に立ちました。帰りの飛行機で、窓の外から一面のオーロラを見ました。客室乗務員も見たことがないほど珍しい。「よく頑張ったな」と父が声を掛けに来てくれたんだと思います。親から子へつないでいく命の尊さがテーマの作品の見方が変わりましたよ。

 -命のつながりって深いテーマですね。

 ★青山 深く普遍性のあるテーマだからこそ、国籍や世代を超えて受け入れられているのでしょう。特に、日本ではお盆など先祖を大事にする文化があり、心に響くんだと思います。

 -10年ぶりの福岡公演ですが、見どころは。

 ★青山 九州新幹線の開通などインフラが整備され、故郷の宮崎県の知人も、気軽に来られるようになりました。人もそれぞれ年を重ね、子どもが成人したり、親になって子育てをしたり、大きく変化しているでしょう。そんな中、“変わらない”作品が、観客の世代や立場によって見方が変わる面白さを楽しんでほしいです。

 ▼あおやま・やよい 宮崎県延岡市出身。1979年4月、劇団四季研究所入所。81年に子どものためのミュージカル「嵐の中の子どもたち」のビッキー役で初舞台。確かな歌唱力と演技力で「オペラ座の怪人」「ウェストサイド物語」「リトルマーメイド」などに出演、幅広い役柄を演じ分ける。

=2019/03/16付 西日本新聞朝刊=

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