作ることやっぱり好きです 16年ぶりオリジナルアルバムリリース 伊勢正三さん

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 「なごり雪」「22才の別れ」などで知られるシンガー・ソングライター伊勢正三さんが16年ぶりのオリジナルアルバム「Re-born」をリリースしました。伊勢さんと言えば「フォークソング」というイメージもありますが、今アルバムはAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)からレゲエまでジャンルの枠を超えた楽曲が並んでいます。

 -アルバムを出すきっかけは?

 ★伊勢 2年前に45周年のベストアルバムを出して、昨年は昔の楽曲を中心としたライブアルバムを出したんですが、どうしても過去のもの。作品を作ることを自分に課さなければならないし、全部書き下ろしという決意の下に作業をしました。ただ、若い頃に比べたらはるかに手間がかかり、時間が必要でした。それで何曲かできたので昨年の夏の終わりぐらいからアルバム作りに入ったんです。今回の12曲の中には、十何年もかかって完成したものもあるし、3年前にレコーディングに入っていたものもあります。

 -アルバムタイトルに「Re-born」と付けたのは?

 ★伊勢 気持ちを入れ替え、自分はまだできる、という意味を込めています。自分の中から生まれてくる音楽に素直に取り組んだ結果、ジャンルにくくれないバラエティーに富んだアルバムとなりました。1曲目の「テレポーテーション」はAOR、3曲目の「小さな約束」にはちょっとラップを入れ、5曲目の「雨のウインク」は歌謡曲にボサノバの要素を加え、7曲目の「旅する二人」はレゲエのリズムです。

 -幅広さは47年のキャリアがなせる技ですか?

 ★伊勢 そうですね。実は「なごり雪」「22才の別れ」を書いたのは21歳の時。プロになって僕が初めて書いた曲なんです。それがめちゃくちゃうまくいったのはラッキーだったんですけど。自分のイメージを変えていこうというのを20代の終わりからやって、30代なんかずっとAOR。書いた時には生まれていなかった人たちが今「なごり雪」を口ずさんでくれるのは喜びでしかないのですが、それにはとらわれず今自分ができることに集中しました。

 -「冬の恋」という曲が特に印象的です。バージョンが二つあることが気になります。

 ★伊勢 実は「冬の恋」ができたのでレコーディングに入る決意ができたんです。自分の中でこういうものをもう一度書けるようになった。曲調は「22才の別れ」とかイルカさんに提供した「雨の物語」の系統です。

 -この間、こういうフォーク的な別れの歌はなかなかできなかったのですか?

 ★伊勢 そうですね。これはもう作った、というより「なごり雪」のサビと同じで出てきた。僕はこの歌が完成するまでどういう手伝いをすればいいんだろう、という感覚でした。

 -そういう意味では、この曲は伊勢正三47年のミュージシャンの帰結点であると。

 ★伊勢 そしてまたここから新しいことをやろうということになる。この曲、実はラップとか語りが入る最後の「冬の恋-parallel」の方が先にできたんです。ただ、楽曲として形がちょっとぼやけた感じがあったので、シンプルにギターだけのアレンジに変えたのが2曲目です。

 -ラブソングが多いなか、メッセージ性が強い曲もありますね。

 ★伊勢 11曲目の「俺たちの詩」は構想十数年。どうまとめるかずっと試行錯誤して。これはほんと、70年代初めの社会的なテーマを歌ったフォークの形です。

 -改めて47年間を振り返って。

 ★伊勢 今になって自分の役割みたいなものがやっと分かってきた。誰かの励ましになったり、元気になってもらえるような歌を仕上げるということです。どうしても自分はのんびりしてしまうので、そこを怠けないようにしたいですね。

 いま一番手掛けたいのは童謡とか唱歌なんです。ラブソングやポップス系というのは人生最後かもしれません。でも、そんなこと言っていても今回のアルバムを作り終えたら、すぐに次を作りたくなっている自分がいる。やっぱり好きみたいですね。作ることが。

 ▼いせ・しょうぞう 1951年11月13日生まれ、大分県津久見市出身。71年から75年まで南こうせつ、山田パンダと「かぐや姫」として活動。75年に大久保一久と「風」を結成。80年にソロに転向した。愛称は「正やん」。28日午後7時から大分市のホルトホール大分で「Re-born」リリース記念のライブを開く。BEA=092(712)4221。

=2019/03/23付 西日本新聞朝刊=

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