話題の昼ドラ!「老い」をあくまでユーモラスに描く、倉本聰渾身のドラマ脚本

やすらぎの郷 上 倉本聰著
やすらぎの郷 上 倉本聰著
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 本書は、今年4月から放映されている昼ドラ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)のシナリオ本である。脚本を手掛けたのは、『北の国から』など数々の名作ドラマを生み出してきた倉本聰(くらもと そう)。現在82歳の倉本が同世代の大人たちに向けて作り出した、ユーモアあふれる作品になっている。

 主人公・菊村栄(きくむら さかえ)は、数多くのテレビドラマの脚本を手掛けた脚本家。倉本が自身の一部を投影させているのは、想像に難くない。そんな栄が最愛の妻をなくしたところから物語は始まる。

 妻があの世へ旅立ったことはもちろん悲しかったが、栄にはホッとした感情もあった。なぜなら妻は晩年、重度の認知症にかかり、その介護に疲れ切っていたからだ。栄は生き続けるのがとても切なくなっていた。いっそのこと脚本の仕事も、すべて辞めてしまおうか。気持ちは沈む一方だった。

 そんなとき、「やすらぎの郷」という老人ホームの存在を思い出す。ここは黄金期のテレビ業界で活躍した人物だけが入所でき、しかも諸経費は無料というもの。都市伝説のような存在だと思っていたが、妻の介護で疲弊していた頃に入所の誘いを受けたのだ。栄は疑心暗鬼になりながらも、妻の死を契機に入所を決意する。

 自らの“老い”に苦悩していた栄だったが、「やすらぎの郷」に入所したとたん、生活が一変する。なにせ、この老人ホームはすべてが快適だった。喧騒から離れた土地に建てられ、館内には医療施設の他、図書・映像ライブラリー、プレイルーム、ラウンジ、さらにはバーまで設置されている。それに加えて栄が驚いたのは、入所者たちは皆、かつていっしょに仕事をした女優、俳優、歌手たちだったのだ。思わぬ再会に喜び、栄の止まっていた時計は少しずつ動き出すのである。

 ちなみにドラマでは、石坂浩二、浅丘ルリ子、有馬稲子、五月みどり、野際陽子、加賀まりこ、藤竜也、ミッキー・カーチス、八千草薫など、昼ドラとは思えない豪華キャスト陣が演じている。この個性的な入所者たちが、若い頃のノリで恋愛の話をしたり、仕事の話をしたり、騒動を起こしたりするのだ。その元気さに、老いの切なさなど吹き飛んでしまう。シニア層はもちろん、幅広い年齢層が楽しめる作品だ。せっかくの人生、楽しんでいきたいものである。


出版社:双葉社
書名:やすらぎの郷 上
著者名:倉本聰
定価(税込):1,620円
税別価格:1,500円
リンク先:http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-31227-0.html


西日本新聞 読書案内編集部

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