宝物のような画文集。大人も子どもも楽しめることうけあい!

わたしの好きな 子どものうた 安野光雅著
わたしの好きな 子どものうた 安野光雅著
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 画家として、絵本作家として広く知られ、世界的にも評価の高い著者が選んだ40曲の「子どものうた」。それらの懐かしい童謡やわらべうたに合わせて描きおろされた珠玉の絵の数々に、著者自身による短い随筆が添えられている。

 驚きは91歳を迎えた著者が描きだす、なお生き生きと新鮮な絵だ。温かみのある落ち着いた印象なのにワクワクと心躍るような楽しさがあり、いつまでも見ていたい不思議な魅力にあふれている。淡い色合いの水彩の絵は和のモチーフだが、構図が大胆で愛らしい。どことなくデンマークやフィンランドなどの北欧デザインにも通じるようなパターンのリズムを持つ。

 添えられた随筆は小気味好く、うたや絵の雰囲気とは違うトーンで静かに語りかけてくる。また、絵と随筆のページの後に童謡やわらべうたの歌詞が掲載されているのだが、メロディーのない歌詞はうたのイメージとは全く違った顔を見せる。

 北原白秋が、短い言葉でも完璧な表現をしていることに改めて気づかされたし、野口雨情の歌詞にはどこまでも悲しみを感じてしまった。サビだけはよく知っていても、すべての歌詞を文字として読むと、意外な新しい発見があった。また、知らないうたならば、歌詞をじっくり読んだあとにインターネットで調べて曲を聴き、イメージの違いを楽しむこともできる。絵に癒されるだけではなく、うたをより深く味わうことができる要素がたくさん詰まっているのだ。

 きっとこの本は、さまざまな人の心に響く。子どものために絵本を手に取る機会の多い人や安野光雅ファンだけでなく、童謡を懐かしく感じる年代の人にも、デザインや作詞を勉強している若い世代の人にも、価値のある1冊となるだろう。贈り物にしても喜ばれそうだ。

 余談だが、まとめてある歌詞の順番は、ほぼ絵の順番どおりに並んでいるのに、あるひとまとまりだけ絵と歌詞の順序がバラバラになっているところがある。なぜだろうと思いながらじっと眺めていたが、ふと、あるテーマの絵だけが続いているのに気がついた。もしかして隠されたこだわりを見つけたのかな?とちょっとうれしい気持ちになった。正解かどうかはわからない。気になったらぜひ手に取って確かめてみてほしい。


出版社:講談社
書名:わたしの好きな 子どものうた
著者名:安野光雅
定価(税込):3,132円
税別価格:2,900円
リンク先:http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062205436

西日本新聞 読書案内編集部

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