「うつ病かもしれない・・・」漠然と思う人にこそおすすめしたい、コミックエッセイ

うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち 田中圭一著
うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち 田中圭一著
写真を見る

 自身もうつ病を患い快復した経験を持つ著者が、同じく経験者たちにインタビューを重ねたマンガが話題を呼んでいる。登場するのは、大槻ケンヂ、宮内悠介、内田樹といった有名人から、OL、編集者、教師と多様な顔ぶれだ。

 2011年、厚生労働省により、精神疾患がガンなどと同様の「五大疾患」に認定されたことからもわかる通り、日本においてメンタルヘルス問題は、もはや単なる病気の枠を超えて誰もがなり得る社会問題となっている。本書でも、「うつは心の風邪」という表現を取り下げ、「うつは心のガン」という見方を打ち出している。うつが風邪のようなものだと認識されると、風邪くらいで会社や学校を休むものじゃないといわれてしまうが、ガンであれば休むことも、治療を受けることも当然のことになる。

 自分はうつ病かも・・・と思いつつ、うつ病とうまく向き合えない人におすすめしたい。うつ病を患っている人の多くは、文字を読むこともままならない。しかし、コミックエッセイと位置づけられる本書は、うつ病を実際に体験した人たちの話が視覚化されているので、活字ばかりが並ぶ専門書を読むよりも頭に入ってきやすい。手塚治虫タッチの絵柄で、うつ状態時にある意識を「濁った寒天」と描いたり、突如襲ってくる不安をスライムのような「うつ妖怪」と表現したり、それらに親しみを覚える人も少なくないことだろう。

 また、うつとは無縁、うつ病の気持ちはさっぱりわからないというアシスタント、カネコ氏のポジティブなキャラクターが、重くなりがちなテーマを軽快にテンポよく展開する一助となっている。周囲にうつ病の人がいるけれどイマイチ理解ができない・・・という人も、「うつとはなんぞや」ということを、さまざまな体験談からカネコ氏とともに学ぶことができる。

 本書で描かれている内容は、あくまで個人の体験に基づいた感触、感想で、うつ病の治療法ではない。本書を通じて人それぞれでうつ病の症状と向き合い方が違うこと、自分は自分でいい、と思えたなら、著者がうつトンネルを脱出するきっかけになったという本、『自分の「うつ」を直した精神科医の方法』(宮島賢也著)も併せて読んでみてはいかがだろうか。


出版社:KADOKAWA
書名:うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち
著者名:田中圭一
定価(税込):1,080円
税別価格:1,000円
リンク先:http://www.kadokawa.co.jp/product/321507000404/

西日本新聞 読書案内編集部

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]