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東野圭吾の衝撃ミステリ・・・死刑で被害者遺族は救われるのか?

虚ろな十字架 東野圭吾著
虚ろな十字架 東野圭吾著
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 子どもの頃、親から「人に『死ね』と言うのは罪深い行為だ」と口を酸っぱくして注意された。他人の死を望み、あまつさえそれを口にするなんて短慮で非道徳極まる行為だと。だが、分別を持った大人が表立って他人の死を強く希望し、胸の内に暗い憎しみの炎をたぎらせることも少なくない。特に、それが大事な肉親を殺された被害者遺族なら。

 「殺人という罪と、その罪をどう贖(あがな)うか」。ずっしりと重いそのテーマを軸に、過去と現在の殺人事件の真相を明らかにしていくミステリーが本書だ。主人公の中原道正は11年前、強盗に小学2年生の愛娘を殺され、それをきっかけに妻・小夜子とも離婚している。広告代理店のデザインの仕事も続けることができず、現在はペット向けの葬儀会社の社長を務めている。強盗は夫婦の望んでいた死刑に処されたが、その後も事件は二人の人生に暗い影を落としているのだ。しかし、ある日突然中原のもとに小夜子の訃報がもたらされる。小夜子もまた、男に殺害されたというのだ。犯人は町村作造という老人だったが、中原は離婚後フリーライターとして犯罪に向き合ってきた小夜子の遺稿をきっかけに、町村の娘夫婦である仁科史也・花恵の抱える重大な秘密に迫っていく。

 タイトルの「虚ろな十字架」とは、小夜子の遺稿『死刑廃止論という名の暴力』の中で使用されている言葉だ。かつて娘を殺した犯人は、その前にも殺人の罪で刑務所に入っていたが、模範囚とみなされ出所してしまった。そのせいで娘が殺された。小夜子の書いた「一体どこの誰に、『この殺人犯は刑務所に○○年入れておけば真人間になる』などと断言できるだろう。殺人者をそんな虚ろな十字架に縛り付けることに、どんな意味があるというのか」という文章と、彼女の「殺人者には死刑を」という頑なな姿勢には怒りと無念さが満ち満ちており、読者の胸を強く打つ。

 目には目を、歯には歯を、殺人には極刑を。しかし、事はそう単純にはいかない。手の中の賽(さい)ですらどう転ぶか分からないのだから、今はよくても明日には自分が被害者に、被害者遺族に、加害者の身内に、あるいは殺人犯になってしまうかもしれない。その時にどんな答えを出すべきなのか。本書は読み始めると止まらない上質なエンターテイメントであると同時に、その果てのない問いを考えるきっかけともなるだろう。


出版社:光文社
書名:虚ろな十字架
著者名:東野圭吾
定価(税込):691円
税別価格:640円
リンク先:http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334774660


西日本新聞 読書案内編集部

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