犯罪事件に笑ってしまうのは不謹慎!?ユーモアあふれるミステリー短編集

探偵さえいなければ 東川篤哉著
探偵さえいなければ 東川篤哉著
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 関東の架空の都市、烏賊川市を舞台に繰り広げられるユーモア・ミステリー。烏賊川市シリーズ8作目で、日本推理作家協会賞にノミネートされた『ゆるキャラはなぜ殺される』など東川作品ならではのユーモア・ミステリー5編を収録した短編集で、実に4年ぶりのシリーズ作品となる。

 関東随一の犯罪都市と噂される烏賊の都、烏賊川市では、連日奇妙な事件が巻き起こる。探偵・鵜飼杜夫をはじめとする複数の探偵が、間が抜けて見える殺人事件を間が抜けた感じで解決していく。著者の作品では、伏線の張り方に唸らされることが多い。本作も笑いと組み合わせた伏線が見事で、実に東川作品らしい逸品である。

 例えば、第一篇『倉持和哉のアリバイ』では、スターバックスはスターボックス、タリーズコーヒーはチャーリーズコーヒーと、烏賊川市の名のとおり、いかがわしい偽物が幅を利かせている。その中で、ロレックスの偽物ローレックスが事件の鍵となるのだから、愉快極まりない。殺人事件を楽しく読むというのは不謹慎かもしれないが、他四編もユーモアたっぷりで笑わせてくれる。

 烏賊川市シリーズといえば、探偵と助手、大家の3人組と警察コンビのギャグを交えたやり取りが見どころ。本作は短編集ということで、一編に登場するキャラクターが限られている。烏賊川市の新作長編を期待するファンも多い。主要登場人物が一堂に会しての掛け合いも久しぶりに見てみたいものだ。

 本作で東川作品に初めて触れるという人には、ぜひシリーズ第一作『密室の鍵貸します』から順に読み進めることをおすすめしたい。主要登場人物の生い立ちやキャラの濃さ、相関図などを知ってから読むとより一層楽しめることだろう。著者の作品には本シリーズの他に、社会的現象を巻き起こした大ヒット作『謎解きはディナーのあとで』がある。原作を知らずともドラマを見ていた人であれば、本作の作風に「なるほど!」とうなずけることだろう。"


出版社:光文社
書名:探偵さえいなければ
著者名:東川篤哉
定価(税込):1,620円
税別価格:1,500円
リンク先:http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334911706


西日本新聞 読書案内編集部

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