「怒らない人」ほど危険信号!? 誤解されがちな「怒り」の正体を暴く

ちいさなことにイライラしなくなる本 イヤな気分を引きずらない技術
ちいさなことにイライラしなくなる本 イヤな気分を引きずらない技術
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 知人に「何を言われても怒らない人」がいる。後輩に生意気な口をたたかれても、上司から無理難題を押しつけられても、大海の如き心の広さでそれを受け入れ、愚痴をこぼすこともない。筆者も尊敬していたのだが、ある日その知人は突然会社に来なくなってしまった。うつ状態になり、布団から起き上がれなくなったのだ。

 本書の著者の言葉を借りるなら、知人は「怒りなど感じていない」と思い込んでいたが、本当は「小さなことによる“小さなイライラ”が、気づかないうちにどんどんたまって暴発してしまった」ということになるだろう。かように「ちいさな怒り」は心と身体に蓄積しやすく、いつまで経ってもくすぶっていることが多い。意外なところに原因が潜んでいるため、根本的に解消しにくいからだ。しかも小さなことにイライラする人ほど、「自分は怒りを表に出すことがないので、怒りっぽい人間ではない」と考えている。

 小さいながらも手強い「怒り」の正体を突き止め、自分の幸せを守るための方法を学べるのが本書だ。著者は、怒りを上手く解消するためには原因を正しく探ることが必要だと述べている。原因を見つける方法がこれまた斬新だ。利き手の力を抜いて手首をブラブラと揺らし、怒りの原因として考えられることを頭の中で思い描いてみると、その原因が「アタリ」なら指が引っ張られたり、しびれるような感覚になったりするのだという。

 本書には、この「怒り発見器」を用いることで、家事を全くしてくれない夫にイライラしていた妻に「夫じゃなく、本当は夫の愚痴を話しても自分の苦労話にすり替えてしまう母親に怒っていたんだ」と気づかせたり、実演販売で失礼な態度をとられたと憤っていた女性に「ただの八つ当たりだったんだ」と自覚してもらったりして、怒りの解消につなげたという事例が多数掲載されている。それぞれのケースに合わせて、心の中で唱えるとすっと怒りが引いていく「魔法のことば」も紹介されているので、思い当たる節のある人は試してみるとよいだろう。

 何より心を軽くしてくれるのは、「怒りは、本来は闘争本能・逃走本能に根ざした自分を守るための感情」「正しく怒れば、安心できる人間関係が構築される」という事実だ。うつで動けなくなった知人も、以前の聖人のような振る舞いではなくなってしまったが、その方がずっと生き生きしていて美しかったことを思い出す。


出版社:マガジンハウス
書名:ちいさなことにイライラしなくなる本 イヤな気分を引きずらない技術
著者名:大嶋信頼
定価(税込):1,404円
税別価格:1,300円
リンク先:https://magazineworld.jp/books/paper/2940/


西日本新聞 読書案内編集部

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