バッタ博士がアフリカのバッタ問題に挑む!ユーモアあふれるノンフィクション

バッタを倒しにアフリカへ
バッタを倒しにアフリカへ
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 この本が新書と知らずに手に取った人は、表紙を見て、新手の芸人の本かと思うかもしれない。緑の衣を身にまとい、顔を緑に塗り、触角風のものが突き出た被り物を頭に乗せ、捕虫網をかまえた30代の男。添えられたタイトルは「バッタを倒しにアフリカへ」。しかも、著者名は「前野ウルド浩太郎」となっている。しかし、彼はれっきとした博士(農学)なのである。「バッタに食べられたい」というちょっと変わった夢をもってはいるが。

 これは博士号を得たものの、就職先のない著者がいきなり西アフリカに乗り込み、「ウルド」の称号を得るまでのバッタ退治ノンフィクションだ。したがって、通常の新書のように学者が研究内容を一般向けに解説する類のものではない。

 文体もユーモアにあふれており、『ドラゴンクエスト』を引き合いに出したり、おもしろ系ブログみたいなエピソードが中心だったりと、あきさせない魅力がある。

 著者が行ったモーリタニアは『地球の歩き方』にも載っていない国で、日本語はもちろん英語もほとんど通じない。フランス語なら大丈夫なのだが、著者はフランス語が話せない。その上、今回がフィールドワークのデビュー戦なのである。

 現地に着いた著者はいきなり入国を拒否される。「お前が住む予定の住所はこの世に存在しない」というのだ。迎えがきてくれて、なんとか通過できたと思ったら、こんどは荷物を次々没収される。それは賄賂をわたさなかった腹いせらしいと後に知る。

 こうした体験が詳細につづられていく本書は観察眼の鋭さもあって、現地のようすや研究者の暮らしがよくわかる。海外のフィールドワークに行こうと思っている研究者の参考となるような情報も多い。滞在する施設にどのように迎えられるかといったところから雇うスタッフとの金銭面の交渉まで紹介されている。また、アフリカ人と日本人のバッタの捕り方のちがいなど、雑学風の描写も興味深い。

 そもそも、倒すのが「バッタ」である時点で、日本人は滑稽味を感じてしまうかもしれないが、アフリカではバッタによる農作物への被害が深刻な問題になっている。大量の殺虫剤を国家間で融通し合いながら常備するほどなのだ。

 はたして、著者は見事にバッタを倒すことができたのか。結末は是非自分で確かめてもらいたい。最初の数ページを読むだけで、バッタの世界に引き込まれるはずだ。


出版社:光文社
書名:バッタを倒しにアフリカへ
著者名:前野ウルド浩太郎
定価(税込):994円
税別価格:920円
リンク先:http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334039899


西日本新聞 読書案内編集部

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