13歳の少年の全身43カ所を傷つけた理不尽な殺意。迫真のノンフィクション事件ルポ!

『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』石井光太著
『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』石井光太著
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 2015年2月20日に起こった川崎中1男子殺害事件。ネットの掲示板やSNSで犯人探しが巻き起こったことを覚えている人は多いだろう。事件の全容が明らかになるにつれ犯行現場を訪れる人は増え、1万人近くが献花をしたという。

 なぜ未成年の加害者3人は当時13歳の少年の命を奪ったのか。加害者や被害者がどんな家庭環境で育ったのか。事件が起きた川崎とはどんな街なのか。なぜ多くの少年犯罪の中でこの事件が大きく報じられ、人々の胸を打ったのか。関係者への取材をもとに深層へと迫る迫真の事件ルポである。

 タイトルにある「43」という数字は、殺害された少年の体に残っていた傷跡の数だ。当初、加害者たちは殺すつもりはなくカッターナイフで切りつけているうちに殺意が芽生え、引くに引けないところまでいってしまったという。3人のうち2人は被害者少年と頻繁に遊んでいた仲だったにもかかわらず、ある出来事をきっかけにその手にカッターを握ったのだ。

 事件の背景には、いくつもの社会問題がつみ重なっている。
いじめや虐待などから、学校や家族で居場所を失い、外の世界に救いを求めた加害者少年たち。彼らは歪んだ「友情」で結ばれていった。この事件は、そんな少年たちが集団の行動原理に染まった結果起きてしまった悲劇でもある。また、加害者のうち2名は保護観察中だったにもかかわらず、“社会の目”は犯行のストッパーとはなり得なかった。
この幾重にも重なった問題を紐解いていくと、「彼らがどのように出会い、どのように時間を共有していたのか」「被害者少年は、事件より以前から暴力をふるわれていたのになぜ加害者たちと一緒にいたのか」といった、この事件の深層が見えてくる。

 本書は、公判で明らかにされた事件の詳細や証言のほか、被害者少年の父親への取材、事件現場となった河川敷で献花を整理するなどのボランティアをしていた人々が抱いている事件への思い、少年たちと交流のあった友人へのインタビューによって成り立っている。
事件をめぐる多くの証言は、「では我々はいかにして子どもたちと向き合うべきなのか」という課題をも問うてくる。

 本書を読むにはそれなりの覚悟が必要だ。ワクワクするような物語ではないし、ハッピーエンドが待っているわけでもない。でもだからこそ、子ども達がいつ陥るかもしれない「社会の隙間」を知っておくことは必要ではないか。社会問題に関心のある人、教育現場に携わる者、子育てに悩んでいる人などには特に一読をおすすめしたい。


出版社:双葉社
書名:43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層
著者名:石井光太
定価(税込):1,620円
税別価格:1,500円
リンク先:http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-31323-9.html

 西日本新聞 読書案内編集部

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