圧倒的な熱量と分析力で描かれる、『ウルトラセブン』制作の裏側

『「ウルトラセブン」の帰還』白石雅彦著
『「ウルトラセブン」の帰還』白石雅彦著
写真を見る

 「セブン、セブン、セブン……」から始まるテーマソングを覚えておいでの方も多いだろう。そう、円谷プロの空想特撮シリーズ第3作目にあたる『ウルトラセブン』だ。2017年に放送開始から50年を迎えた『ウルトラセブン』は、その重厚なストーリーやウルトラセブンの奇抜なデザインからか、未だに人気が衰えない。「ウルトラマンシリーズ」ファンの中にも、『ウルトラセブン』を最高傑作として挙げる者が多いほどだ。

 本書は、そんな『ウルトラセブン』制作の裏側を赤裸々に描いたドキュメンタリー。『「ウルトラQ」の誕生』「「ウルトラマン」の飛翔」に続く円谷プロの勃興、発展、衰退をつぶさに描いたシリーズの第3弾だ。関連書籍から製作日報、「特撮の神様」と呼ばれた円谷英二の日記まで、網を張り巡らせるかのごとく膨大な資料をもとに分析されている。

 『ウルトラセブン』への愛情と洞察に満ちた本文、そして引用される文章から、当時の円谷プロの雰囲気が生き生きと伝わって来る良書だ。特に、今は亡き監督や俳優陣の語る「裏話」は、『ウルトラセブン』ファンにとっては垂涎(すいぜん)ものだろう。

 中でも推したいのが、『ウルトラセブン』8話、「狙われた街」の制作秘話。「狙われた街」のあらすじはこうだ。北川町という町で、突然人間が暴れ出し他人に暴行を加えるという事件や事故が続発する。調べを進めるうち、それが宇宙人の用意した煙草を吸ったせいだということが判明。事の元凶・メトロン星人の住処であるアパートの一室で、モロボシ・ダン(ウルトラセブン)は宇宙人と会うのだが……。

 こう書くといかにも緊迫感あふれる場面だが、畳に座りちゃぶ台を挟んで会話する異形の宇宙人とダン、というシュールな絵面に、視聴した筆者は度肝を抜かれた。これが制作側では大問題となったそうだ。『ウルトラセブン』は「海外売りを考慮して、日本的な風習、風景は取り入れない」という不文律があったそうだが、8話を担当した実相寺昭雄監督はそんなもの知らぬ存ぜぬとばかりに華麗にスルー。怒り狂ったプロデューサーがテレビ局中実相寺監督を探し回ったが、隠れてしまって出てこなかったという。

 「狙われた街」はラストの印象的なナレーションもあり、ファンから「名作」として熱い支持を獲得している。名作や傑作の裏側には、やはり関わる人間達の名エピソードがあるのだと、感銘を受けずにはいられない。


出版社:双葉社
書名:「ウルトラセブン」の帰還
著者名:白石雅彦
定価(税込):1,944円
税別価格:1,800円
リンク先:http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-31326-0.html?c=30597&o=date&type=t&word=%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%BB%E3%83%96%E3%83%B3

 西日本新聞 読書案内編集部

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]