政治経済を動かす支配者がわかれば世界の直面している危機の本質がわかる

『誰が世界を支配しているのか?』ノーム・チョムスキー著
『誰が世界を支配しているのか?』ノーム・チョムスキー著
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 この『誰が世界を支配しているのか?』は2016年に知識人の間で話題になった書の翻訳である。あとがきは「2017年版によせて」とアップデートされていて、トランプ大統領の誕生についても、簡潔に述べられており、それによると、「現在の米共和党は世界史上、もっとも危険な組織だ」と記されている。これは著者ノーム・チョムスキーの関心が政治経済だけでなく、環境問題や核戦争の危機にも向けられているところの表れである。ちなみに、著者は言語学者としての功績をもつMITの名誉教授だ。そのかたわら、反戦運動をし、アメリカの外交政策や御用メディアを批判してきた。帯の文句を引用すれば、「現代アメリカ最高の知性」である。

 冒頭で、「日本の読者の皆様へ」という一文がおかれている。いきなり、第二次世界大戦勃発のところからはじまる硬派な内容なので、はじめてチョムスキーを読む人は面食らうかもしれない。しかし、あとの内容を理解するには重要なところなので、少しガマンして読み進めて欲しい。しばらくすれば、1990年代のアップルの話になるので、理解は容易になるだろう。その要旨は結びの部分に明らかだ。

 「18世紀の英国を説明するのに、アダム・スミスは『人類の支配者たち』について述べています。(中略)彼らはその影響が他の人々にとっていかに『悲惨でも』気にしませんでした。現在の支配者たちは巨大な複合企業群であり、金融操作に焦点を合わせていますが、基本的構造は変わっていません」

 たとえば、記憶に新しいギリシア危機も、チョムスキーの視点から見ると、ニュース番組の表面的な解説とはちがった景色が浮かび上がる。それは「彼ら」の「民主主義をないがしろにする姿勢」だ。あるいは、アメリカの金融政策を司り、「聖アラン」と讃えられていたFRB議長のグリーンスパンがだれにとって「聖」だったのかも示されている。

 他にも気になるトピックは多いが、日々のニュースの本質をつかみたいと望むならば、個別につまみ食いするよりも、本書を丸ごと通読することをおすすめする。


出版社:双葉社
書名:誰が世界を支配しているのか?
著者名:ノーム・チョムスキー 大地舜 榊原美奈子
定価(税込):1,728円
税別価格:1,600円
リンク先:http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-31341-3.html?c=39900&o=date&type=t&word=%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC

 西日本新聞 読書案内編集部

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