検索は口ほどに物をいう――ビッグデータ分析が暴く人間の本性

『誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性』セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ著
『誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性』セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ著
写真を見る

 本書はグーグルのデータ・サイエンティストや大学の客員講師などを務めてきた著者による、全世界の検索結果から見えてくる人々の「嘘」についての調査記録である。一般向けのビッグデータ分析系書籍の新たな一冊として話題を呼び、2018年2月初版発行ながら早くも重版がかかっている。ビッグデータとは何かを分かりやすく解説する一方で、データ分析にまつわる罠、乱用の危険や倫理的問題にも触れている。

 “目”ならぬ“検索”は口ほどに物をいうとは言い得て妙で、人は実名SNSでの投稿や従来のアンケート調査では見栄を張って嘘をつく一方、匿名の検索窓には本当の欲望や悩みを打ち明けている。グーグル使用体験を思い出してみてほしい。人前では憚られるような検索をしたことがある人が圧倒的多数だろう。

 グーグル、SNS、ポルノサイトの検索データなど、ありとあらゆるビッグデータが利用可能となり、それを分析する手法が確立された今、通説とは異なる人間の本性が明らかになることは自明の理である。人種差別や性的な悩みや嗜好、貧困や児童虐待などショッキングなテーマが続くが、開示されていくデータの多くは興味深いものばかりで、人間の、ひいては自分の心の深淵を覗いているかのようにすら感じることだろう。統計学に造詣が深くない人にも読みやすい内容となっている。

 自然科学がペニシリン、人工衛星、コンピューターなどを生み出し、人間生活に物理的な変化をもたらしたように、ビッグデータが社会科学や行動科学の発展に寄与し、愛や学習、生き方などへの理解を深める役割を担う時代もそう遠くないのかもしれない。

 著者は「結びに」で、アマゾンのレビュー欄を分析することによって読者がどれくらいある本を読み通したかを推測する方法を記述している。その上で、「本書を最後まで読む人はビッグデータの教えに従えば、ほとんどいないはずだ」と結んでいるところが、サイエンティストである著者らしい。


出版社:光文社
書名:誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性
著者名:セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ 酒井泰介:訳
定価(税込):1,944円
税別価格:1,800円
リンク先:https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334962166

 西日本新聞 読書案内編集部

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]