限界を知れば話題づくりにも健康づくりにも役に立つ

『人体の限界』山崎昌廣著
『人体の限界』山崎昌廣著
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 オリンピックなど大きなスポーツのイベントが開催されると、注目されるのがその記録。たとえば、100m走における世界記録は現在、ウサイン・ボルトの9秒58だが、人間はどこまで速くなれるのか、限界値はどのあたりだろうか。

 100m走に関していえば、9秒44~48という研究データがある。また、序盤中盤終盤それぞれに強い選手が出した最高記録をつなぎ合わせると9秒35だという。あるいは、筋パワー(筋力×筋収縮速度)と最大酸素摂取量の関係から求めた限界値は9秒3となる。いずれにせよ、ボルトの記録はほぼ限界に近いということがわかる。

 このように本書は、人体を「限界」という切り口からながめていく。著者の指摘によれば、スタート時の反応時間を限界値である0.085秒まで短縮させることができれば、ボルトは9秒5を切れるという。ただし、この反応時間は現在のルールではフライングと判定されてしまうという問題があるのだが。

 「限界」というのは、なにも超人級のアスリートにだけ関係のある話ではない。限界を知ることは、標準を知ることでもある。それらが一般人向けにわかりやすく書かれているので、体力づくりや健康管理に関心・不安をもっている人には特に参考になるだろう。

 高齢者に多い頻尿の悩みなど、人によっては他人に相談しにくいかもしれない。しかし、限界や標準を知っていれば、自分が本当に頻尿かどうか判断でき、医師に相談する目安にもなる。ちなみに、1回の排尿の標準は200mLで、膀胱に蓄えられる我慢の限界は最大400mLだ。

 他に、働き方の参考になるようなデータもある。時差ぼけというと、海外旅行を連想しがちだが、交代勤務とも関係がある。人間のリズムは昼行性にできているので、深夜勤務はやはり無理があり、睡眠不足を起こす。もし、2組2交代制で深夜勤務を固定すると、睡眠不足は200分を超える。これを4組3交代制にすると、睡眠不足は100分を切るところまで改善されるそうだ。

 無理をしないということは、作業の効率を高めたり快適な生活を送ったりする上で欠かせない。本書は「限界」というキーワードが設定されていることで、無機質な数字が頭に入ってきやすくなっている。

 同時に、「体内時計は視床下部にある」
といったウンチクも仕入れることができる。日常生活で人とは少しちがった知識を披露したい人にもおすすめだ。


出版社:SBクリエイティブ
書名:人体の限界
著者名:山崎昌廣
定価(税込):1,080円
税別価格:1,000円
リンク先:http://www.sbcr.jp/products/4797388435.html

 西日本新聞 読書案内編集部

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