ちまたにはびこる「被害者ぶる人」から身を守れ

『被害者のふりをせずにはいられない人』片田珠美著
『被害者のふりをせずにはいられない人』片田珠美著
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 多数の著作をもつ人気の精神科医・片田珠美が今回取り上げたのは、最近、ちまたに目立ち始めた「被害者ぶる人」である。それはどういう人たちなのか。

 「必ずしも被害者ではないのに、被害を受けたとウソをついたり、受けた被害を過度に強調したりして、誰かを攻撃するような人のことである」

 例として、職場で遅刻を繰り返す社員に注意したところ、パワハラだと逆ギレされたケースなどが挙げられている。自分でこぼしたコーヒーの代金が返金されなかったからといって、コンビニのオーナーに頭突きをした男もいる。こうした「被害者ぶる」典型がクレーマーだ。いまや働く人の7割がサービス業の従事者だが、その90%は悪質なクレームにストレスを感じており、1%は精神疾患になっている。社会としても放っておけない被害が出ているわけだ。

 「被害者ぶる人」が目的とするのは、経済的な利得ばかりではない。組織なら、保身といったこともあるわけで、上司が部下に責任を押しつけるケースをはじめ、読者の身近にも多々見受けられるであろう。

 彼らが厄介なのは、理屈が通じず、事実のねつ造も平気で、自分に都合の悪いことは認めない。そして、本人は本気で被害を受けたと信じていることが大半だ。被害を言い立てる能力にも長けている。その上、彼らは被害感情からくる怒りを無関係な人に向けることも珍しくない。本当は会社の待遇に不満があるのに、同僚の悪意ない言動を攻撃するといった具合だ。つまり、だれもがトバッチリを食う危険性があるのだ。

 「被害者ぶる人」が増えた背景には、小泉政権以降広がった格差や自己責任社会がある。そのことをアベノミクスの影響などにも触れながら解説していく著者の手際は見事だ。しかし、本書のミソはなんといっても、「被害者ぶる人」への対処法がきちんと記されていることだろう。反論はすぐにすること、丁寧な言葉を使うこと、その他実践的なものばかりで役に立つ。


出版社:青春出版社
書名:被害者のふりをせずにはいられない人
著者名:片田珠美
定価(税込):1,069円
税別価格:990円
リンク先:http://www.seishun.co.jp/book/20027/

 西日本新聞 読書案内編集部

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