タワマンを舞台に背徳の恋を描いた妖しく切ない恋愛小説

『ロンリネス』桐野夏生著
『ロンリネス』桐野夏生著
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 人気女性誌『VERY』連載、ベストセラー『ハピネス』の続編。東京湾岸にある高級タワーマンションに暮らす岩見有紗は、ママカースト内での複雑な人間関係に悩んでいた。夫・俊平の身勝手な言い分、無理解な行動に嫌悪感を抱き、寂しさに耐える毎日を送る。

 そんな中、同じマンションに住む高梨と急接近し、ママ友でW不倫中の美雨ママ(洋子)に相談をするうちに、有紗は高梨に強く惹かれていることに気づく。有紗と俊平との間に起きた過去の出来事、洋子の不倫、有紗と高梨の最初の出会いについては、本作では描かれていない。そのため前作の『ハピネス』と併せて読むことをおすすめする。

 「二度も結婚したのに本当の恋を知らず」という有紗の思い。「結婚して子供も出来てから出会ってしまって、妻は本当の相手じゃなかったと、後悔することがある」という高梨の言葉。二人が惹かれ合うのは必然なのか、それとも孤独を埋めるためだけのものなのか。少なくとも有紗は前者の考えを持っているように見える。一方、女性慣れしており妻との修羅場も潜り抜けている高梨が、有紗を真剣に想っているのか、単なるプレイボーイなのか、本作ではまだわからない。二人は家族に知られてはいけない二人の恋愛を一生続けるために離れることを決意するが、この先二人を待ち受けるのは希望か破滅か。二人の行く先を描いた続編を期待したいところである。

 本作には順風満帆な夫婦は出てこない。どの家庭も一触即発の離婚危機を孕んでいる。恋をするもしないも自由である。だが、夫という立場、妻という立場にありながらの恋は、誰かを傷つけるものであるということを忘れてはいけない。浮気や不倫報道が連日流れるこの現代社会の縮図を、著者は描きたかったのだろうか。夫と妻、それぞれに潜在する浮気・不倫願望、心が焼かれるほどのリピリとした異性への感情を剥き出しに描き切る著者の筆力に終始圧倒される。家があって夫・妻がいて子どももいる。だが皆、心の奥に孤独を抱えている。タイトルの『ロンリネス』がしっくりくる作品だ。


出版社:光文社
書名:ロンリネス
著者名:桐野夏生
定価(税込):1,728円
税別価格:1,600円
リンク先:https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334912130

 西日本新聞 読書案内編集部

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