80年代のファミコンの歴史と子どもたちのリアルな生態

『ファミコンに育てられた男』フジタ著
『ファミコンに育てられた男』フジタ著
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 著者は「ファミコン芸人」として知られるフジタ。本書はファミコンを中心に家庭用ゲームソフト35本の基本情報とエッセイを核に構成されている。取り上げられているのは、1983年9月発売の『マリオブラザーズ』から1991年7月発売の『ファイナルファンタジーⅣ』まで。各作品にまつわる思い出やゲームの長所短所が教訓つきで語られていく。

 「周囲に流されず信念を貫くことの大切さを知った『スペランカー』」
「人間必死になれば妙案が浮かぶことを教えてくれた『高橋名人の冒険島』」

 といった具合に。しかし、本書のなによりの特徴は、これらゲームの主要ターゲットであった小中学生ユーザーの視点で語られていることだ。作り手ではなく受け手の側、それもゲームの上手かった個人の統一した視点で語られているところが貴重である。

 というのも、無料コンテンツであるテレビアニメと違い、ゲームソフトは1本5000円前後する。一般の小学生がリアルタイムで、これだけのゲーム(じっさいには項目として挙がっているものより、はるかに多い本数)をやりつづけ、クリアすることなんて不可能だ。

 その点、著者はプロローグにある通り、小学2年生にして母死別父不在の一人暮らしで、自由になる金だけはあるという特殊な環境に育った。孤独をまぎらわすためにゲームをしつづけ、さらに芸人になったことでもわかる通り、語り口も巧みだ。プロローグなど短い会話で父親の人物像を巧みに浮かび上がらせている。

 そのプロローグは少々重たい内容であるが、本編に入ってからは軽妙だ。現在、ユーチューブで人気のあるジャンルにゲームの実況解説がある。著者はその技を30年以上昔、小学生にして編み出していたというエピソードが楽しい。ふつう、大人が書くエッセイの中の子どもは美化されがちだが、本書に登場する子どもたちはゲームという媒介があるため、かなりリアルな顔を見せる。

 ゲーム自体を詳しく知らない読者も読みやすい構成になっている一方で、ゲーマー向けのコアな情報やゲーム業界の裏話もかなり赤裸々なものが挿入されており、80年代の社会の一端が浮かび上がってくる。ゲームファンはもちろん、子ども時代の同級生と話しているような、懐かしい気分に浸りたい人におすすめである。


出版社:双葉社
書名:ファミコンに育てられた男
著者名:フジタ
定価(税込):1,404円
税別価格:1,300円
リンク先:http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-31367-3.html?c=30598&o=date&type=t&word=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%9F%E3%82%B3%E3%83%B3

 西日本新聞 読書案内編集部

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