受診者急増中!発達障害を取り巻く医療の問題と世間の問題

『「発達障害」と言いたがる人たち』 香山リカ著
『「発達障害」と言いたがる人たち』 香山リカ著
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 ここ10年くらいの間で急速に目にする機会が増えた言葉に「ADHD(注意欠如・多動性障害)」や「アスペルガー症候群」がある。これらは「発達障害」と総称される。

 SNSなどを眺めていても、自分もしくは家族がADHDやアスペルガーであることに言及したものがよくある。それらに対するコメントも、「自分もそうです」「これを読んで、自分がアスペルガーだとわかりました」といったような内容があふれている。

 現に、自分が発達障害ではないかとメンタルクリニックを受診する大人が増えているのだという。専門外来では、半年待ちがざらで、予約をとるのにも電話が2時間以上つながらず、つながったと思ったら、「来月分はすぐに埋まりました」といったアナウンスが流れるといった状態らしい。

 しかし、診察の結果、その人たちが発達障害であることはほとんどなく、せいぜいグレーゾーン。そのことを告げると、みな失望の表情を浮かべるのだという。つまり、彼らは発達障害と言われたいのである。

 どうしてなのか。彼らは日常生活において違和感や生きづらさを感じており、その原因を知りたがっているのである。そうした状態で「片づけられない」「落ちつきがない」「こだわりが強い」といった発達障害の特徴を知ると、自分もそうだと重ね合わせてしまう。そうした風潮をビジネスにつなげようとする製薬会社がキャンペーンを行うので、ますます「患者」が増えていく。

 もっとも、発達障害の理解が深まること自体は悪いことではない。周囲の無理解によって苦しんでいる本物の発達障害の人も大勢いるからだ。また、「発達障害と言いたがる」人たちに対しても、むやみに否定するのはよくないという。自己肯定感を損なうことになりかねない上に、彼らが「困りごと」を抱えていることに変わりはないからだ。

 とはいえ、過剰診断の弊害も出ており、治療することが状況を好転させるとも限らない。自分やまわりの誰かが「発達障害かも」と思ったら、そう言いたがっているだけかどうかを見極め、「困りごと」の解決にはどうするのがよいのか考える。そのためにも、発達障害に関する知識・理解を深められる本書はおすすめだ。


出版社:SBクリエイティブ
書名:「発達障害」と言いたがる人たち
著者名:香山リカ
定価(税込):864円
税別価格:800円
リンク先:http://www.sbcr.jp/products/4797393415.html

 西日本新聞 読書案内編集部

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