企業の「県民性」と各都道府県の経済活動がわかるビッグデータ解説

『地元の力を生かす「ご当地企業」』帝国データバンク/中村宏之 著
『地元の力を生かす「ご当地企業」』帝国データバンク/中村宏之 著
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 いわゆるビッグデータを活用した新書である。帝国データバンクが集めた企業活動に関するデータをもとに、10の指標を作成。47都道府県の特徴が比較できるようになっている。たとえば、企業の終わりというと「倒産」をイメージするが、じつは後継者難を主な理由とする「休廃業・解散」がその3倍もある。それを「社長の若さ」「事業継承確率」といった指標を使って、分析比較する。それによると、東北および島根において、社長の高齢化と後継者不足が深刻になっているようだ。

 本文は各都道府県別に記述されている。北海道であれば、まず「自然の恵み豊かな地/著名企業も多く輩出」とキャッチコピー的な見出しがつけられ、人口・面積とそれが全国何位か、それにレーダーチャート化した10の指標が掲げられ、ひと目で大まかなイメージがつかめるようになっている。さらに、小見出しをつけて、産業や観光名所、住民気質、ビジネスの傾向や商圏などが簡潔に紹介されていく。

 その内容も、結果をリストアップしただけのような機械的なものではない。北海道の有名企業を記したパートでは、東京本社だが、北海道発祥であるニトリが挙げられている。青森県でいえば、全国1位の魚介類消費県である一方、外食への支出は全国最下位であるというデータに続けて、
「つまり自宅で魚をよく食べていることが分かる」
という解説が記されている。これにより、もとは無機質なデータであったものが読みやすく理解しやすくなっている。加えて、ところどころに、コラムという形で特徴のある「ご当地企業」の成功例が記されている。

 さらに、帝国データバンクのスタッフが足で稼いだ情報をもとにした記述もある。大阪を例にとれば、
「複数の都市で勤務経験のあるビジネスマンからは『大阪は決めるスピードが速い』という話をよく聞く」
というふうに即断即決の気質が裏づけされている。さすが商人の町といったところだ。反対に、従来のイメージとは異なる意外な地元気質が見て取れる県もある。

 県民性比較といった読み物としての側面もあり、各項目がコンパクトなので、ビジネスマンがちょっとした空き時間に読むのにちょうどいい。営業先での話題づくりにもなる。また、ビジネス上の課題や県外進出の腹案をもつ経営者には、参考になる部分が大いにあるに違いない。


出版社:中央公論新社
書名:地元の力を生かす「ご当地企業」
著者名:帝国データバンク/中村宏之 著
定価(税込):972円
税別価格:900円
リンク先:http://www.chuko.co.jp/laclef/2018/07/150628.html

 西日本新聞 読書案内編集部

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