日本推理作家協会賞受賞作家が描く、骨格標本の謎をめぐる極上ミステリ!

『骨を弔う』宇佐美まこと著
『骨を弔う』宇佐美まこと著
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 「ああ、まっこと骨太で面白い小説が読みたい」と思ったとき、ついつい手に取ってしまう作家の本がある。ホラー、ミステリの分野で高い評価を受けている宇佐美まこと氏の作品だ。

 本書『骨を弔う』は、2017年に『愚者の毒』で日本推理作家協会賞を受賞後、『死はすぐそこの影の中』『熟れた月』に続く3作目の長篇ミステリにあたる。物語へ読者を引きずり込むのは、冒頭の小さな新聞記事だ。「堤防の土中から骨格標本が発掘された」というその地元紙の記事を目にした本多豊は、まだ小学生だった30年前、4人の同級生と連れだって理科室の骨格標本を山中に埋めたことを思い出す。不思議なカリスマ性を持つ少女・真実子の発案でやった無邪気な悪戯だったが、あれは本当に「悪戯」だったのか。標本なんかではなく、違うものを埋めていたのではないか? つまり、本物の人間の骨を……。

 ある経緯からその疑念を強くした豊は、ばらばらになった当時の仲間たちを訪ね歩く。広告代理店に勤めている哲平、県議会議員の妻となっている京香、東日本大震災で愛する家族を亡くした正一、そして恐ろしく聡明だった真実子。少年時代とは打って変わってままならない人生を歩んでいた彼らは、謎の解明を通じて自らの現在と向き合っていく。

 ミステリを読む楽しみといえば、張り巡らされた伏線が回収され謎が解明されるカタルシスだろう。しかし、本作の魅力はそれだけではない。謎を追う過程で描かれる登場人物の人となりや彼らの織りなすドラマがとにかくリアルなのだ。特に、政治家の妻となってから、夫に虐げられ義父母に軽んじられ、小学生時代とは打ってかわって萎縮してしまった京香の心情は息をのむほど生々しい。

 骨格標本を埋めた少年時代を境に、ままならない思いを抱えて成長してきた彼ら。弔いとは、死者を悼み葬ることで、生者が生きるために再び前を向く儀式のことだ。それと同じように、豊たちは過去と向き合い、ひとつひとつ折り合いをつけていく。その人生ドラマが深く重く容赦なく描かれているからこそ、本作はただのミステリではなく極上のエンターテイメント小説に仕上がっている。特に最後の一文にはきっと驚かされるだろう。骨だけに、ホネの髄まで「小説を読む喜び」を味わえる作品だ。


出版社:小学館
書名:骨を弔う
著者名:宇佐美まこと
定価(税込):1,728円
税別価格:1,600円
リンク先:https://www.shogakukan.co.jp/pr/honetomu/

 西日本新聞 読書案内編集部

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