読めば京都に行きたくなる! 女子高生3人の記憶を巡るご当地ミステリー

『太秦荘ダイアリー』望月麻衣著
『太秦荘ダイアリー』望月麻衣著
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 初めて京都市に降り立った人は、かなりの衝撃を受けるのではないだろうか。1000年の歴史を誇る古の都のあちこちに、いわゆる「萌えキャラ」のポスターが貼られていることに……。これは京都市営地下鉄及び市営バスの利用促進を目的とした、「地下鉄に乗るっ」というプロジェクトで生み出された美少女たち。そして『太秦荘ダイアリー』は、京都市民にとって馴染み深い彼女たちが、幼い頃の記憶を巡る謎に巻き込まれていくミステリー小説だ。

 太秦天神川駅のほど近くに佇む「太秦荘」の住人・太秦萌、陸上部に所属する活発な少女・松賀咲、アニメや漫画が大好きなオタク少女・小野ミサ、別々の学校に通う3人の女子高生の元に一通のハガキが届く。「約束の時が来ました。祭りに来てください」。その不思議なハガキをきっかけに清水寺で出会った3人は、初対面のはずなのに、どこか懐かしさを感じていた。どうもそれには、10年前に「太秦荘」で起きたある“事故”が関わっているようなのだが……。封印された過去の記憶が呼び起こされ、3人はミサの兄・陵らとともに過去の真相を追い始める。

 本書の魅力はなんといっても、ミステリーのドキドキ感と、“ご当地モノ小説”ならではの抜群のリアル感だ。太秦天神川に清水寺、烏丸御池、祇園、八坂神社などなど耳慣れた京都の名所がずらりと並び、まるで萌たちと一緒に京都の街を駆け回っているような気分にさせてくれる。それもそのはず、本書の著者はアニメ化もされた人気作品『京都寺町三条のホームズ』を生んだ望月麻衣氏。京都に住まう人気小説家の手にかかれば、たちどころに古都の爽やかな、どこか懐かしい風が薫ってくる。

 本書を読み終わった頃には、京都に行きたくなってうずうずする人も多いだろう。もしや、これが「地下鉄に乗るっ」を主導している京都市交通局の類まれなる策略ではないだろうか。たとえそうだとしても、京都の魅力をふんだんに詰め込み、極上の謎でくるんだ生八ツ橋のような本書の面白さには抗えない。ぜひご一読あれ。


出版社:双葉社
書名:太秦荘ダイアリー
著者名:望月麻衣
定価(税込):640円
税別価格:593円
リンク先:http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-52150-4.html

 西日本新聞 読書案内編集部

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