古代から現代まで、歴史学研究の最新成果を楽しく学ぶことができる!

『日本史の論点』中公新書編集部 編
『日本史の論点』中公新書編集部 編
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 歴史の本を読むのはおもしろい。歴史上のさまざまな事件が、いつ、どこで、どのようにして起きたのかという事実を知ることが楽しい。また、時間の流れの中にひとつの事件を位置づけながら、その事件が起きざるを得なかったさまざまな要因同士がどう関係し、影響し合ったのかを考えることは、一種の謎解きのような楽しさがある。

 さらに、本書ではまた別のおもしろさ、つまり歴史をめぐる議論のおもしろさを味わうことができる。その上、知っていたことが覆される、驚きに満ちた本といってもよいだろう。タイトルからもわかるように、古代の「邪馬台国はどこにあったのか」から始まり、現代の「象徴天皇制はなぜ続いているのか」まで、日本史に関する29の論点が挙げられ、それぞれ最新の研究成果を知ることができる。古代、中世、近世、近代、現代の5つの時代に分けて執筆したのは、日本の歴史学研究を代表する5人の泰斗である。

 ここでは、知っていたことが覆されてびっくりしたことを29の論点の中からひとつだけ拾い出して紹介してみよう。それは「日本は鎖国によって閉ざされていた、は本当か」という近世パートの論点である。幕末の日本は徳川幕府の鎖国政策を開国へと転換し、明治維新を経て欧化政策・文明開化へというぐあいに海外への扉を大きく開いていく。つまり閉ざされた「暗」の社会から、開かれた「明」の社会へと180度転換したという理解がいわば常識である。

 ところが、実際のところ海外との関係において江戸から明治へはさほど劇的な転換ではなかったのだそうだ。長崎などに窓口が限られていたとはいえ徳川時代にもけっこう海外との交流があり、ヨーロッパの文化も国内に流布していた。一方、明治政府は、欧米列強に遅れをとっていた日本の状況を徳川幕府による鎖国政策の閉鎖性のせいにしようとした。つまり、江戸時代もそれ相応に海外と交流していたが、明治政府が江戸時代は閉鎖的だったという印象操作をしたということであって、「暗」と「明」にたとえて対比できるほどの違いはないのだという。

 このように、知っていたことが覆される驚きは、歴史学研究の最先端に触れる楽しさを味わっているということにほかならない。本書が教えてくれるのは、学問としての歴史学は日々新しい研究成果を生み出しており、これまでの常識がかならずしも常識ではなくなっているということなのである。


出版社:中央公論新社
書名:日本史の論点
著者名:中公新書編集部 編
定価(税込):950円
税別価格:880円
リンク先:http://www.chuko.co.jp/shinsho/2018/08/102500.html

 西日本新聞 読書案内編集部

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