20億円をだまし取られても明るく生きる、新庄剛志の痛快&爽快エッセイ

『わいたこら。』新庄剛志著
『わいたこら。』新庄剛志著
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 平成に青春時代を過ごした筆者にとって、新庄剛志さんは印象的な野球選手だ。「スーパースター」の名にふさわしい派手な言動とパフォーマンス。日本人選手初のワールドシリーズ出場を果たし、北海道日本ハムファイターズを日本一に導いた確かな才能と実力。まさに「世界のSHINJO」だった。

 だからこそ、数々の伝説を打ち立ててきた新庄さんがテレビ朝日系番組「しくじり先生 俺みたいになるな!!!」で20億円以上もの大金を使い込まれ、財産がたったの2200万円になっていたと明かした時には、ちまたの人々と同じように絶句した。あの新庄が? なぜ? それに、どうして財産を失ってるのに明るく笑っていられるんだろう? と。

 本書は、そんな新庄さんがスターであり続ける理由、そして誰よりも信頼していた身内の「Aさん」に巨額のお金をだまし取られた時の胸の内を正直に告白したエッセイだ。タイトルの「わいたこら」とは、新庄さんの地元・九州の方言で「何だこれ?」という意味。信じていた相手に裏切られたら、そう叫びたくもなるだろう。一時はどん底の精神状態にあった新庄さんだったが、現在はバリ島に移住して新しいことにチャレンジし続けているという。

 その底抜けのポジティブさの源泉は、「逆境ほど燃える」という考え方にある。12億円の年棒を蹴って2200万円でメジャーへ行くことを決めた時、「お前なんかが通用するわけない」と激しいバッシングを受けた。その時、新庄さんはたたかれるのがうれしくて、なんと「もっとたたけ」と思っていたそうだ。理由は「そこまでボロカスに言われて活躍したら、みんなの驚きはとてつもなくデカいだろう。めちゃくちゃワクワクするよね?」とのこと。

 実際、メジャーのレベルは想像以上だったそうだが、それでも「成功する」と決めていたという。そのマインドが新庄さんを一躍メッツのスーパースターにし、後々所属するファイターズの日本シリーズ優勝を実現させることとなった。「絶対無理だ」と思えるような過酷な状況に身を置き、確実に成功するための努力を地道に積み重ねるというのが“新庄流”なのだ。

 本書に収められているエピソードは決して愉快なものばかりではない。なのに、なぜだろう。本書を読み終わると、とにかくスカッとする。たとえ今が厳しくても、それこそがスターへの第一歩かもしれないと、そう思えるのだ。


出版社:学研プラス
書名:わいたこら。
著者名:新庄剛志
定価(税込):1,404円
税別価格:1,300円
リンク先:https://hon.gakken.jp/book/1340662300

 西日本新聞 読書案内編集部

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