来年の大河ドラマの主人公!箱根駅伝創設など日本スポーツ界に尽力した金栗四三の実像

『金栗四三 消えたオリンピック走者』佐山和夫著
『金栗四三 消えたオリンピック走者』佐山和夫著
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 『あまちゃん』の作者である宮藤官九郎が今度は大河ドラマの脚本を手掛けるらしいことは、大河ファンや芸能情報通なら、とっくに知っていることであろう。その主人公が大河ドラマ定番の戦国武将ではなく、マラソンランナーらしいことも。2020年は東京オリンピックだからな……ということまではわかっても、では、その主人公たる金栗四三(かなくり しそう)については、どれだけ知っているだろうか。

 基本情報を押さえておくと、金栗四三はまず、本書のタイトルにもある「消えたオリンピック走者」である。日本人として初めてオリンピックに参加した2人のうちの1人だ。そのオリンピック(1912年のストックホルム大会)でのマラソン競技中、突如、消えてしまう。そして、55年後、オリンピック委員会に招かれ、ストックホルムでゴールテープを切った。そのときのタイムは「54年8カ月6日5時間32分20秒3」とアナウンスされた。

 さらに、近年のテレビ番組で好まれそうな話だが、金栗四三はストックホルムのあるスウェーデンでヒーロー扱いされている。かの地でオリンピック100周年の記念行事があった前後に著者は現地取材を行っているが、そのことを知った地元新聞から逆取材を受けたほどだ。「消えた日本人ランナー」のことはよく知られており、その後、建てられたマラソン・パリビリオンでは、大会で優勝したランナーよりも大きく扱われている。

 金栗四三がそこまで親しみをもたれている理由のひとつに彼の謙虚で律儀な人柄がある。消えたあと介抱してくれたペトレ家の人々とは、折にふれて連絡を取り、感謝を忘れなかった。そうしたエピソードが語り継がれることで、日本という国自体に好意を持っている人も多いという。さらに、金栗四三がオリンピックでの敗北にくじけず、逆にバネとして、日本のスポーツ界発展に寄与したことに感銘を受ける人もたくさんいる。

 いまや日本の正月風景となった箱根駅伝を創設するため、奔走したのも金栗四三の功績のひとつだ。詳細は本文にあたってほしいが、本書の特徴はこうした出来事を核としつつも、公式の年表からだけではうかがい知れない実像に迫ったところにある。


出版社:潮出版社
書名:金栗四三 消えたオリンピック走者
著者名:佐山和夫
定価(税込):850円
税別価格:787円
リンク先:http://www.usio.co.jp/html/books/shosai.php?book_cd=4281

 西日本新聞 読書案内編集部

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