豊富なデータをもとに持続可能な地域社会の未来を描く人口減少問題の処方箋

『「地域人口ビジョン」をつくる』藤山浩著
『「地域人口ビジョン」をつくる』藤山浩著
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 日本は近い将来、人口が1億人を割り、その大半が高齢者となる。そのとき、産業の担い手をどうするのか。これと関連して先頃、外国人労働者の受け入れ拡大を目指す法改正がおこなわれ、大きなニュースとなった。ただ残念なことに、法案に関する議論が十分になされたとは言いがたい、強権的な採決であった。

 労働者も含めた人口減少問題に、国民のほとんどは不安を感じながらも、どうすればいいのか具体的な展望をもてずにいる。数年前に市町村が消滅すると謳った本がベストセラーになったのも、こうした不安のあらわれであろう。

 件のベストセラーは2010年の国勢調査を土台にしたものだったが、その後出された2015年の国勢調査を見てみると、明らかな変化があるという。田園回帰の動きが顕著なのだ。結婚・出産・子育ての主力世代である30代女性が増えている自治体がいくつも出てきている。それも、離島や山間部に目立ち、「消滅可能性市町村」とされていた自治体も多く含まれている。

 本書は、そうした先行事例を紹介し、持続可能な自治体にしていくための提言がまとめられている。町おこしのイベントをしましょうといった小手先の対策ではなく、長期的な地域人口ビジョン、つまり、戦略を考えるための内容となっている。地域住民が我が事ととらえて本気になれるよう、基礎的な生活圏ごとの人口分析や予測データをふんだんに使っているのが特徴だ。

 本書で強く主張されているのは、地域経済や介護といった他の部門と連動した分析やシミュレーションが大切だということである。また、経済も人口も大きい方がよいという従来型の成長志向では問題は解決しないという点にも釘をさしている。表面的な人口の増減を論じるのではなく、地域の環境に合わせた最適な規模を考える必要がある。

 長年にわたり、若年層が流出してきた過疎指定市町村では、出生率を少々上げたところで安定化は達成できない。世代間でバランスのとれた定住増加を目指すことが基本的な戦略となる。毎年人口1%分の定住を増やせば、過疎市町村の9割で子ども人口の安定化が達成できる──そう聞けば、いまよりも希望をもって問題に取り組むことができるだろう。


出版社:農文協
書名:「地域人口ビジョン」をつくる
著者名:藤山浩
定価(税込):2,808円
税別価格:2,600円
リンク先:http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54017107/

 西日本新聞 読書案内編集部

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