絶望の中に切ない青春がきらめくタイムリミット・ミステリー

『神のダイスを見上げて』知念実希人著
『神のダイスを見上げて』知念実希人著
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 2018年11月に「読もう! 行こう! 広島×光文社キャンペーン」の目玉企画として広島県内の書店のみにて先行発売された本作がいよいよ全国販売となった。驚くことに発売直後にもかかわらず、すでに3刷の重版が決定している。広島限定版と全国版とで異なる装画は、どちらも幻想的で美しく、タイトルと物語が迎えるラストシーンにぴったりなのだ。

 巨大小惑星ダイスが地球に接近中、あと5日で人類は滅亡するかもしれないという中で、唯一の家族である最愛の姉を殺された男子高校生・漆原亮が、自らの手で復讐を遂げようと犯人捜しに暴走するタイムリミット・ミステリー。美しい姉は誰に殺されたのか。恋人もそっちのけで姉の交友関係を探るうち、再び凄惨な殺人が起こる。そんな中、あることをきっかけに、クラスで異端視されている少女・四元美咲との間にぎこちなくも不思議な絆が生まれていく。

 青春、狂気、終末、美少女、家族といった魅力的なミステリー要素を見事に足し合わせ、医療に関する部分も欠かさず組み込み、なおかつ緊迫感のある描写で畳みかける。現役医師という顔をもつ著者だからこそ可能な病院内の様子や病気の症状、患者の様子などの描写がパニックサスペンスのようなテーマにリアリティと説得力を生むのだ。息をつく暇もないほど二転三転し、最後の最後まで真犯人が誰なのか見当もつかない。誰もが狂っている世界で、異端とされる美咲が真っ当に見える倒錯的なバランス感覚も素晴らしい。ラストの美しい余韻にしばし浸ることになるだろう。本作に関して、途中で読むのをやめたりせず、時間がある時に一気読みすることをおすすめする。

 2018年は本屋大賞ノミネートを果たし、4冊の新作を刊行。2019年1月には『神酒クリニックで乾杯を』(角川文庫)がドラマ化されるなど、大躍進を続ける著者。今後の執筆活動がますます楽しみである。本作で初めて著者の作品と出会うという人は、これを機にぜひ他の作品も手に取ってみていただきたい。


出版社:光文社
書名:神のダイスを見上げて
著者名:知念実希人
定価(税込):1,404円
税別価格:1,300円
リンク先:https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334912543

 西日本新聞 読書案内編集部

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