SNS疲れから来る心の漏電状態を脱出するための教養のすすめ

『ネット断ち』齋藤孝著
『ネット断ち』齋藤孝著
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 ある調査によると、日本人は1日平均4時間以上もインターネットに費やしているそうだ。便利な面もあるが、SNS疲れといった言葉に代表されるように、それによって疲弊している人も大勢いる。ネットには危険な側面もあることに気づいていながら、ズルズルと続けてしまっているのが現状だ。もはやネットと無縁に暮らすことは不可能に近いだろうが、せめて1日1時間でも「ネット断ち」をしようというのが本書の提案だ。

 SNSは手軽に承認欲求を満たしてくれる反面、不安感を増幅させてもいる。他人の反応が気になって、義務的なコミュニケーションをくり返す。さらに、匿名のコメント欄では罵詈雑言で攻撃し合うことも珍しくない。そんなことに時間を費やすことがいかに不毛か。言ってみれば、それは「心の漏電状態」だ。

 ネットから離れられない日々を送っていると、その人の生活全体にも悪影響が及ぶ。行動心理学や社会心理学の分野では、「人間の判断力や意志力といった精神力は有限であるということ」がもはや常識だ。ネットによる心の漏電状態がつづくと、他に向けられるべき精神エネルギーが足りなくなってしまう。
では、どうすればいいのか。

 『声に出して読みたい日本語』などの著作でも知られる著者は、「ネット断ち」で浮いた時間を教養の獲得や読書にあてること、あるいは身体性を取り戻すために使うことをすすめる。たとえば、本を読むという行為に深く沈潜すれば、それはさらっと読むのとはまったく違い、自身の「体験」となり、過去の偉人と言葉を交わすことができる。そのあたりの具体的な手引き、どんな本をどのように読めばいいかといったサジェスチョンが本書のメインの内容となっている。

 その紹介のしかたも、定番の名著だけでなく「劇薬」もピックアップし、雑学混じりなので、もとから読書好きの人でも楽しめるはずだ。
たとえば、米俵1俵が60kgになったのは「成人の男女であれば誰もが持ち運べる重さだから」という衝撃の事実が記されている。江戸時代の人にとってはそうだったらしい。農村には5俵担いで歩ける女性もいたらしい。

 他にも、学生や子供向けに著者が実践して効果のあった方法も、指導の過程まで詳しく述べられている。親や教育関係者が読んでも参考になるはずだ。


出版社:青春出版社
書名:ネット断ち
著者名:齋藤孝
定価(税込):994円
税別価格:920円
リンク先:http://www.seishun.co.jp/book/20668/

 西日本新聞 読書案内編集部

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