行政に頼らず住民の手で「困りごと」を解決するための豊富な実践例

『むらの困りごと解決隊』農文協編
『むらの困りごと解決隊』農文協編
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 限界集落という言葉を聞くようになって久しい。それに対応して、政治の世界でも地方創生といったキーワードが語られてきた。ところが、かけ声ばかり目立って、実際の成果はあまり報告されていないような気もする。しかし、世の中が悪いと文句ばかり言っていてもしかたがない。自分たちの手でなんとかしようという動きが、ちょっとした潮流になりつつある。

 本書のタイトルは「むらの困りごと解決隊」だが、そういう名称の特定団体が活動しているという話ではない。各地域や集落でそれぞれ問題の解決にあたっており、その実践例が当事者によるレポートの形でまとめられている。17あるレポートに共通しているのは、「地域運営組織」を立ち上げつつある、あるいは、立ち上げた活動報告であることだ。

 「地域運営組織」は従来の自治会や公民館などの地縁組織を補完しつつ、一歩踏み込んだ経済活動なども行う住民の自主組織だ。「平成の大合併」以降の行政サービスの低下を補ったり、過疎化や鳥獣害といった「むらの困りごと」を解決したりすることを目的としている。その特徴は活動のきっかけが具体的なことだ。

 たとえば、「川津南やっちみる会」は人口約210人の避難訓練を取り組みのひとつとしていた。それが住民の70%以上が参加する一大行事になったことで、訓練後に夏祭りを実施するようになった。その結果、近隣地区からの参加者が訪れ、地元出身者もこの日にあわせて帰省するようになるといった広がりを見せはじめた。また、観光資源である鍾乳洞を活用するため、地元ガイドの養成に取り組んだところ、年間の入場者数が200前後から1500人を超えるまでになった。

 こうした例でもわかるように、ひとつひとつは小さな拠点による小さな取り組みである。規模を求めがちな営利企業や近年コストカットばかりに目を向けている行政には、ほとんど相手にされないような領域だ。実際、レポートの中には、資金繰りに苦労し、それをどう乗り越えたかといった生々しいものも含まれている。しかし、だからこそ本書は、「困りごと」をかかえた地域の人たちに大いに参考になるだろう。


出版社:農文協
書名:むらの困りごと解決隊
著者名:農文協編
定価(税込):2,160円
税別価格:2,000円
リンク先:http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54015126/

 西日本新聞 読書案内編集部

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