震災後の過酷な現実で80歳すぎても元気になれることを証明した「ほめ日記」の実践者

『羽根田ヨシさんの 震災・原発・ほめ日記』馬場マコト著
『羽根田ヨシさんの 震災・原発・ほめ日記』馬場マコト著
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 「……未だに余震にて現在まだ続き眠られず。居間でテレビ見ながら日記書く。民子また帰れず。布団には眠れず。余震まだ続く。」

 3・11と呼ばれることになった東日本大震災が発生した日(2011年)の日記だ。歌のリフレインのようにくり返される「余震まだ続く」という言葉に胸が痛くなる人もいるかもしれない。これを記した「ヨシさん」はこのとき、80歳だ。彼女は福島県南相馬市で被災した。

 文中に登場する「民子」とは、同居する息子の嫁で、看護師をしている。震災の年がおわる頃、民子はヨシさんの健康を心配していた。それまで病気らしい病気もせず、農家暮らしをしてきたヨシさんの体力が急激に衰えていたのだ。自主避難後、転々とする暮らしがこたえたのだろう。ところが、震災4年目を迎えるころ、ヨシさんは変わっていた。

 「一時は押し車なしでは歩けなかった足腰も、自ら始めた毎朝100回のスクワットで、いまは杖さえあれば、どこにいけるほどの回復ぶり」を見せる。なにがそれほどの回復と気力の充実をもたらしたのか。

 要因はいくつかあるのだが、核となるのが「ほめ日記」だ。ひとことで言えば、自分をほめる日記で、手塚千砂子が提唱している。長年日記をつけてきたヨシさんは、JAの発行誌でその存在を知り、「ほめ日記」に挑戦しはじめる。持前の前向きな精神は「ほめ日記」と相性がよく、提唱者の手塚を感動させたほどだ。

 しかし、手塚がヨシさんに会いに行きたい旨を手紙したところ、最初、断られた。なぜなら、まだ放射線量が高いからだ。とてもお招きできないという返事だった。なんとか線量が落ちつき、ヨシたち家族が自宅へ戻れるようになるまでに6年以上の月日が流れていた。その後も苦難がつづく。そうした過酷な現実が裏にあってのポジティブ・マインドなのである。

 だからこそ、ヨシさんの日記は読んだ人に励ましと勇気を与える。縁のあった著者が本書のもとになったレポートを雑誌『潮』に発表したところ、同誌始まって以来という数の反響が読者からあったという。ヨシさんが自分に向けたシンプルなメッセージは読者の胸にも届く。とくに、日記がふんだんに引用される第五章以降は、家族の話に耳を傾けているような、あたたかい気持ちになれるに違いない。


出版社:潮出版社
書名:羽根田ヨシさんの 震災・原発・ほめ日記
著者名:馬場マコト
定価(税込):950円
税別価格:880円
リンク先:http://www.usio.co.jp/books/ushio_shinsyo/6664

 西日本新聞 読書案内編集部

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