食べることをあきらめない、あきらめさせたくない!工夫する介護食とは

『噛む力が弱った人のおいしい長生きごはん 誤嚥を防ぐ!』クリコ著 阿部仁子監修
『噛む力が弱った人のおいしい長生きごはん 誤嚥を防ぐ!』クリコ著 阿部仁子監修
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 タレントの堀ちえみさんが舌がんを公表し世間の関心を集めた。その影響で、歯医者などに口の中の不調についての問い合わせが増えているという。確かに、有名人の経験を知ることで自身の知識が広がり、予防や注意のきっかけとなることも多い。

 例えば「介護食」というと、年齢を重ね硬いものが食べられなくなったときのものという印象が強かった。しかし実際には、先天的な病気や口腔内の病気などで噛(か)むことができない人も大勢いるのだ。そう思い至ったうえでの本書は実にタイムリー。自分や身近な人が高齢になったときだけではなく、急に普通の食事がとれない病気になったときも……と想像力を働かせながら、興味深く読むことができた。

 著者のクリコ氏はもともと料理研究家だが、2011年に夫が口腔底がんの手術を受けたことをきっかけに介護食作りを始めた。そして次第に、より見た目や風味、食感を工夫するようになる。なぜなら、食事とはただ栄養が整ってさえいれば良しというものではないからだ。喜びがない食事で食が細くなれば心身はどんどん弱っていく。食べたいという意欲を持つことが、生きる希望を生むためにいかに大切か、著者は夫の介護を通して実感したのである。

 しかし、日々三度の介護食を手作りするのは大変なこと。しかも食欲をそそる見た目や誤嚥(ごえん)を防ぐ工夫をするには、なおさら手間も時間もかかる。当時はまだ「おいしい」介護食の情報も少なく、きっと手探り状態で苦労されたに違いない。そのなかで著者が試行錯誤してたどり着いた、ベース素材の作りおきという方法、これは画期的だ。毎日続けるために簡単で、なおかつ味も見た目にもこだわっている。この方法なら、きっと作る側も食べる側も安心だろう。

 巻頭には、「噛む、飲み込む力に合わせた食べやすい食品の形状と必要な調理方法と注意点」の一覧表があり、各人の状況に合わせて調理する目安となる。さらに本書には、レシピだけでなく介護食の基本の説明やヒントが盛りだくさん。初心者でも理解しやすいようになっている。

 料理の写真は美しく、普通のレシピ本と変わらない。「牛焼肉丼」や「鶏唐揚げ」など、一見して介護食とは思えないものが並ぶが、どれも舌と上あごでつぶして食べられるほどやわらかい。なかでも本物そっくりの「えびフライ」の作り方は、そのアイデアに脱帽。ぜひ確認してほしい。現在介護をしている多くの人にとって、心強い味方となる一冊である。


出版社:講談社
書名:噛む力が弱った人のおいしい長生きごはん 誤嚥を防ぐ!
著者名:著/クリコ 監/阿部仁子
定価(税込):1,404円
税別価格:1,300円
リンク先:http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000318477

 西日本新聞 読書案内編集部

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