ジビエ料理ファンから狩りガールまで、頼りになるイノシシ・シカの専門書

『猟師が教える シカ・イノシシ利用大全』田中康弘著
『猟師が教える シカ・イノシシ利用大全』田中康弘著
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 イノシシやシカの肉をつかったジビエ料理が静かなブームだという。その影響からか、趣味として狩猟を行う「狩りガール」と呼ばれる女性のハンターも増えているそうだ。そう、今、イノシシとシカがキテいるのである。

 本書には、そのイノシシとシカの狩猟方法や、家庭でもジビエ料理が楽しめるレシピ、さらに角や牙を使った雑貨の作り方などが、写真家でもある著者の鮮やかな写真とともに丁寧に紹介されている。それぞれのノウハウを教えてくれるのは、プロの猟師をはじめ、カフェやレストラン、クラフト工房を営んでいる方々。言うまでもなくイノシシとシカは野生獣である。正しい知識がなければ、狩猟はもちろん、食べるにあたっても危険をともなう。まだまだ専門書の少ないこのジャンルにおいて、専門家によるアドバイスが満載の本書は、役に立つというよりも「頼りになる」という言葉がふさわしい。

 ページをめくってまず驚かされるのは、レシピのバラエティだ。タタキやステーキにスペアリブ、マーマレード煮……どれも目が釘付けになってしまう。もちろん肉だけではない。イノシシの骨鍋はどうだ。一度も食したことなどないにもかかわらず、写真を眺めているだけで野性味あふれる濃厚で力強い味が口中に溢れ出すようだ。もともとイノシシとシカは、ヨーロッパでは最高級素材として扱われ、貴族だけが楽しむものだった。それを家庭でも味わえるとなれば、人生の喜びがひとつ増えるといっても過言ではないだろう。

 とはいえ、このようにブームだガールだというと、なかには「貴重なイノシシやシカを……」と、眉をひそめる方もいるかもしれない。だが著者によると、野性獣が貴重だったのは数十年前も過去の話。むしろ現在では個体数は増加しつづけており、山間部の農作物に甚大な被害を及ぼしているという。そして、せっかく捕獲しても、その大半は利用されないまま捨てられているというのだ。そうした状況を改善するために、本書では狩猟した後の売り方、つまり狩猟をビジネスとして成立させるための方法も事例とともに紹介されている。現在のブームを一過性のもので終わせないためにも、本書が多くの人々の目に触れることを期待したい。


出版社:農文協
書名:猟師が教える シカ・イノシシ利用大全
著者名:田中康弘
定価(税込):2,700円
税別価格:2,500円
リンク先:http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54014197/

 西日本新聞 読書案内編集部

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