田舎に住んで自分の夢をかなえる若者が急増中!地域おこし協力隊という生き方

『地域おこし協力隊 10年の挑戦』椎川忍、小田切徳美、佐藤啓太郎 ほか著
『地域おこし協力隊 10年の挑戦』椎川忍、小田切徳美、佐藤啓太郎 ほか著
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 労働とは本来、自分の個性や能力を発揮して楽しんでやるものだ―という言葉がきれい事だと思っている人は大勢いるだろう。ところが、それを実現している20代30代の人たちが増えている。それも、いわゆる意識高い系の人たちの話ではなく、もっと気楽なスタンスで、生まれた土地とは違う場所に住み、自分らしい生き方を見つけている人たちだ。

 ある男性は札幌市内で整体院に就職したが、あまりの過酷さと賃金の低さに失望し、整体師になることはあきらめて退職する。ところが、たまたま新聞で目にした「安定した給料が保証されている仕事」に応募し喜茂別町に移住したところ、運が開けてくる。仕事上のサービスとして無料の出張整体を始めたところ、その町で整体院を開業できるようになり、町会議員にまでなった。

 別の女性は「自然を身近に感じる場所で観光の仕事がしたい」という夢のため、10年続けた美容師の仕事を辞めた。そして、ガイドブックで興味をもった内子町が募集していた観光振興の仕事に応募し、仙台市から四国へと移住する。そこで、美容師時代に培った着物の着付けの技術を活かすことで、観光課題の解決に貢献。来訪動機、滞在時間の増加、商店街への誘客に寄与した。町並みの華やいだ雰囲気を作っている、と地域の人たちにも喜ばれている。

 これらの事例をあと押ししているのが「地域おこし協力隊」という国と地方自治体がバックアップしている制度だ。3年間の仕事と生活費を保証している。本書は制度発足から10年が経過したことを機にまとめられたもので、若い隊員(現役・OB)が自らレポートした内容が中心となっている。

 プロの作家が書いたものとは違い、素朴な文章なので、かえって現場のリアルが伝わるところも多い。協力隊の活動が地域住民の全員から好意的に迎えられるわけではないこと、ときに罵詈雑言を浴びせられるといった報告もある。

 それを記しつつも、楽しさや仕事のやりがいを語っているあたりに説得力を感じる。苦労があってこそ喜びも増すもの。カラー口絵をはじめ随所に散りばめられた写真の中では、みな幸せそうな顔をしている。自分はこんなふうに生きられているだろうか、と問い直すきっかけにしてみてもいいかもしれない。


出版社:農文協
書名:地域おこし協力隊 10年の挑戦
著者名:椎川忍、小田切徳美、佐藤啓太郎 ほか
定価(税込):1,944円
税別価格:1,800円
リンク先:http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54018161/

 西日本新聞 読書案内編集部

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