チューリヒ ルツェルン(スイス)<下> ピカソのモデルに会いたい

ロイス川に架かるカペル橋。夜はライトアップされ幻想的な雰囲気になる=ルツェルン
ロイス川に架かるカペル橋。夜はライトアップされ幻想的な雰囲気になる=ルツェルン
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12世紀頃に建てられたというグロスミュンスター(大聖堂)。二つの塔が美しい=チューリヒ
12世紀頃に建てられたというグロスミュンスター(大聖堂)。二つの塔が美しい=チューリヒ
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聖ペーター教会の時計盤は町歩きの目印に=チューリヒ
聖ペーター教会の時計盤は町歩きの目印に=チューリヒ
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バロック様式のイエズス教会。きらびやかな装飾が美しい=ルツェルン
バロック様式のイエズス教会。きらびやかな装飾が美しい=ルツェルン
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ピカソが描いた絵の前に立つアンジェラ・ローゼンガルトさん。絵と同じネックレスを付けてくれた=ルツェルン 
ピカソが描いた絵の前に立つアンジェラ・ローゼンガルトさん。絵と同じネックレスを付けてくれた=ルツェルン 
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スイスを代表するチューリヒ美術館
スイスを代表するチューリヒ美術館
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 「グリュエッツィ」(こんにちは)。スイス最大の都市、チューリヒの人々はスイスなまりのドイツ語を話す。前回紹介したフランス語圏のローザンヌとは違う国にいるようだ。

 チューリヒには個性的な教会が多い。二つの塔が目印のグロスミュンスター(大聖堂)は、16世紀の宗教改革の中心地。ステンドグラスはスイス出身の彫刻家ジャコメッティの手による。聖ペーター教会の時計盤は欧州最大の直径8・7メートルで、迫力に圧倒される。

 列車に40分ほど揺られ中部の古都ルツェルンへ向かう。この町は中世の建物が数多く残る。ルツェルン湖に注ぐロイス川に、カペル橋が架かる。両岸を斜めにつなぐユニークな木造橋は町のシンボルだ。1333年、湖側からの外敵に備えて造られたという。

 橋の梁(はり)には、スイスと町の歴史を描いた絵が飾られている。橋の途中にある八角形の塔は、かつて監獄や拷問部屋として使われたが、今は土産店。夜、カペル橋がライトアップされると、川面に映る明かりが古い町並みと相まって幻想的な雰囲気を醸し出す。

 川岸に建つイエズス教会も名所の一つ。17世紀のバロック様式の教会で、日本でもおなじみの宣教師フランシスコ・ザビエル(1506~52)を祭る。白を基調とした内装はきらびやかに装飾され、壁画にザビエルの生涯が描かれている。

 ルツェルンを訪れた目的は、画家パブロ・ピカソ(1881~1973)の絵のモデルになった女性に会うため。アンジェラ・ローゼンガルトさんは品のある紫のセーターとズボン姿で現れた。1932年生まれの彼女は、スイスを代表する画商だった父が集めた絵画を収めるローゼンガルト美術館の館長を務める。父とともに画商として活躍し、ピカソとも親交があった。セザンヌ、シャガール、マティス、モネ…。世界有数のコレクションを展示すべく、銀行を改装して2002年に美術館を開いた。

 目玉はもちろんピカソの作品約130点。若かりし頃のアンジェラさんを描いた肖像画5点もある。キュビズム作品ではなく、目鼻立ちがはっきりした彼女の特徴を捉えた絵。ピカソは一言も話さず、彼女をじっと見つめて描いたそうだ。「彼の眼光は鋭く、体に穴が開きそうだった。彼は目で私を食べたのです」とアンジェラさんは懐かしむ。

 ピカソと相対した名物館長は美術愛好家に愛されている。来館者はアンジェラさんを見つけると、目を輝かせて彼女に話しかける。その何げない光景が、スイスの文化の豊かさを物語っている。

 ●メモ

 チューリヒは国際空港がある上に、国内外の他都市とのアクセスがよく、旅の拠点に最適だ。高速列車でミュンヘンまで4時間10分、パリまで4時間、ミラノまで3時間40分。スイスからスペイン、オランダ、クロアチアなどへは直行の寝台列車も走っている。旅行情報はスイス政府観光局のホームページ=http://www.myswiss.jp/=が参考になる。

 ●寄り道=スイスを代表するチューリヒ美術館

 スイスは世界的な絵画コレクションが数多い。チューリヒの「ビュールレ・コレクション」もその一つ。ドイツ出身の実業家ビュールレが、ドラクロワやモネ、ルノワール、ゴッホらの傑作を集め、邸宅を美術館に改装して一般公開していた。10年前の盗難事件を機に、作品をチューリヒ美術館に2020年に移すことが決定。5~7月には、印象派を中心としたコレクションの一部が九州国立博物館(福岡県太宰府市)の特別展で公開される。チューリヒ美術館はスイスを代表する施設で、彫刻家ジャコメッティの作品が豊富なことでも知られる。

 ▼取材協力 スイス政府観光局、スイスインターナショナルエアラインズ、スイストラベルシステム


=2018/01/31付 西日本新聞夕刊=

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