プルゼニ(チェコ)〈下〉 ピルスナー発祥の地

「プルクミストゥル」はホテルでありながら醸造所、レストランも併設。造りたてのビールが味わえる
「プルクミストゥル」はホテルでありながら醸造所、レストランも併設。造りたてのビールが味わえる
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聖バルトロメイ大聖堂から見下ろしたプルゼニ市街地(カメラ内蔵のジオラマモードで撮影)
聖バルトロメイ大聖堂から見下ろしたプルゼニ市街地(カメラ内蔵のジオラマモードで撮影)
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お薦めの飲み方「ムリーコ」
お薦めの飲み方「ムリーコ」
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ビール風呂は肌に良いとされ女性にも人気という
ビール風呂は肌に良いとされ女性にも人気という
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プルゼニュスキー・プラズドロイ醸造所の見学ツアーでは、かつての地下醸造、貯蔵庫も見ることができる
プルゼニュスキー・プラズドロイ醸造所の見学ツアーでは、かつての地下醸造、貯蔵庫も見ることができる
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さまざまなマリオネットが展示されている人形劇博物館
さまざまなマリオネットが展示されている人形劇博物館
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 チェコは「ビール王国」として知られる。キリンビールの調べでは、1人当たりのビール消費量(2016年)は世界1位で、その量は日本の3・5倍に上る。飲まれるのは日本と同じく淡い色ですっきりした「ピルスナー」。プラハから南西に約100キロ離れたプルゼニ(ドイツ名、ピルゼン)は、その名が示す通りピルスナーの発祥地である。

 プルゼニは工業の街として栄えてきた。前回紹介したカルロビバリとは対照的に交通量も多く、路面電車も走る。中心部の共和国広場にそびえる聖バルトロメイ大聖堂は、チェコで一番高い尖塔(せんとう)(102・6メートル)を持つ街のシンボルだ。

 大聖堂から十数分歩いたところにプルゼニュスキー・プラズドロイ醸造所がある。1842年、この場所でピルスナーの元祖「ピルスナー・ウルケル」が生まれた。常温での発酵熟成法「上面発酵」による味も色も濃いビールが主流の時代。ピルスナー・ウルケルは当時はまだ珍しかった低温での「下面発酵」でつくられた。泡立ちが良くすっきりとした味わいは瞬く間に世界に広がったという。

 見学ツアーもあり、かつて醸造、貯蔵を行っていた地下室にも入れる。そこでの楽しみが、昔ながらの製法で造られた一杯だ。ここでしか飲めない無濾過(ろか)、非殺菌のビールを木樽から直接注いでもらった。琥珀色(こはくいろ)のビールはすっきりとしつつも味わい深く、ホップの香りも立っていた。

 ビールが水より安い‐。旅行前に聞いたそんな都市伝説もうそではなかった。スーパーでは缶ビール(500ミリリットル)が約80円。飲食店でもジョッキで200円しなかった。レストランでは注ぎ方を変えた「ムリーコ」(牛乳)と呼ばれる現地独特のビールも味わえた。ジョッキの9割は泡。日本なら「失敗作」だが、そうではない。飲んでみると甘みが感じられ、デザートのようだった。

 「飲み方だけでなく種類も豊富なんですよ」。宿泊先のホテル「プルクミストゥル」のピーター・ミッシュさんは教えてくれた。近年は、チェコでも日本と同様にクラフトビールが人気という。ホテルはレストランと醸造所を併設し、個性豊かなビールを提供していた。上面発酵のフルーティーなビール、クリーミーな黒スタウト、ホップを強烈に効かせた褐色エール。それぞれ特徴があり、飲み過ぎてしまう。空のジョッキがどんどん増えていった。

 そこで終わらないのがビール王国たるゆえん。締めの一杯には、何とお風呂が用意されていた。ビールに麦汁、酵母などが加えられた湯船に漬かると、温められて増幅された香ばしさや苦みが肌にしみる。しかも傍らの蛇口から出るビールは飲み放題。内側からも、外側からもビールに浸りつつ、夜は更けていった。

 カルロビバリで温泉を飲んで、プルゼニでビールに漬かる。旅を振り返ると混乱してくるのは酔いのせいか。ただ、首都プラハでは味わえない地方の魅力を存分に堪能できたのは間違いない。

 ●メモ

 チェコは人口約1060万人(2017年)で、面積は日本の約5分の1。日本からの直行便はなく、ドイツのフランクフルト、フィンランドのヘルシンキ経由などを利用。東京から最短で13時間程度で到着する。プルゼニの人口は約17万人。プラハからプルゼニへはバス、鉄道を利用し、所要時間はいずれも約1時間半。

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 ●寄り道=伝統の人形劇博物館

 ビール醸造博物館、お化け博物館、西ボヘミア博物館、民俗博物館、地下道博物館…。プルゼニには回りきれないほど博物館がある。そんな中から「人形劇博物館」に寄ってみた。

 人形劇はチェコの伝統芸能の一つで、マリオネットと呼ばれる50~80センチの木製の操り人形を使う。今も劇場で人形劇を楽しむ文化が根付いており、2016年にはユネスコ無形文化遺産に登録された。中でも国民的人気を誇るキャラクターが、大きな耳が特徴の親子「シュペイブルとフルヴィーネク」だ。生みの親、ヨゼフ・スクパを輩出するなどプルゼニは人形劇が盛んな土地でもある。

 博物館では、17世紀後半にイタリアからドイツ経由でもたらされた人形劇の歴史、多くの作家やキャラクターを紹介。人形劇の自動実演や操作体験コーナーもあり、実際の雰囲気を味わえる。

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 ★取材協力・チェコ政府観光局

=2018/05/02付 西日本新聞夕刊=

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