ロシア サンクトペテルブルク(上) 華麗な美と苦難の歴史

エルミタージュ美術館(冬宮)前は大勢の観光客でにぎわっていた
エルミタージュ美術館(冬宮)前は大勢の観光客でにぎわっていた
写真を見る
美しい装飾が施されたエルミタージュ美術館内。歩いているだけで楽しい
美しい装飾が施されたエルミタージュ美術館内。歩いているだけで楽しい
写真を見る
レオナルド・ダビンチの「ブノアの聖母」。館内のほとんどの作品は撮影可能なので来館者が熱心にカメラを向けていた
レオナルド・ダビンチの「ブノアの聖母」。館内のほとんどの作品は撮影可能なので来館者が熱心にカメラを向けていた
写真を見る
ロシア皇帝が夏季を過ごした夏宮
ロシア皇帝が夏季を過ごした夏宮
写真を見る
大黒屋光太夫が皇帝と面会したというエカテリーナ宮殿の大広間
大黒屋光太夫が皇帝と面会したというエカテリーナ宮殿の大広間
写真を見る
エカテリーナ宮殿の装飾品として置かれた有田焼の皿や壺
エカテリーナ宮殿の装飾品として置かれた有田焼の皿や壺
写真を見る
タマネギ形の屋根が特徴の血の上の救世主教会。屋根の一部は改修中だった
タマネギ形の屋根が特徴の血の上の救世主教会。屋根の一部は改修中だった
写真を見る

 「ロシアで最も美しい街」「芸術と水の街」と多くの旅行者に称される北西部の都市サンクトペテルブルクを訪れた。ロシア帝国時代の首都は欧州風の石造りの街並みが広がり、かつての王族の豪奢(ごうしゃ)な暮らしぶりをうかがわせる巨大な宮殿が観光名所になっている。その圧倒的なスケールと美しさに、ただただ息をのんだ。

 まずは、パリのルーブル美術館などと並んで世界三大美術館の一つにも数えられるエルミタージュ美術館に向かった。建物は帝国時代に建てられた「冬宮」。冬季に使われる宮殿だった。

 前の広場を歩きながら「この広場は良いことも悪いことも目撃してきました」とガイドのバシーリー・クラーエフさん(56)は話した。1905年、労働者の請願に対し、帝国軍が発砲して多くの市民が犠牲になった「血の日曜日事件」。観光客や市民でにぎわう場所は、悲劇の歴史の舞台でもあった。

 美術館内はとにかく広い。収蔵品は300万点超。レオナルド・ダビンチ、ラファエロ、レンブラント。著名な芸術家の絵画が、まさに所狭しと並ぶ。来館者が思い思いにスマートフォンで撮影する光景にも驚いた。

 作品だけではない。宮殿の部材一つ一つがまさに芸術品。床から天井まで、どこを見ても美しい装飾が施されている。「全ての収蔵品を見るには徹夜でも3年以上かかります」とバシーリーさん。せめて丸1日でも、この空間にひたっていたい気がした。

 「夏宮」は中心部から約30キロ離れたペテルゴフにある大宮殿だ。きらびやかな内装もさることながら、ここは外にある噴水が名物だという。稼働は春から秋で、この日は残念ながら“お休み”。自然の力で動く噴水は100以上あるといい、それも「水の都」たるゆえんなのだろう。

 江戸時代、ロシアに漂着した伊勢国の船頭、大黒屋光太夫が皇帝エカテリーナ2世と面会した大広間があるのはエカテリーナ宮殿。中心部から約25キロのツァールスコエ・セロー(皇帝の村)に立つ。

 34キロもの純金が使われたという大広間は、頭がくらくらするようなまばゆさ。調度品には有田焼の壺(つぼ)や皿もあり、九州との縁も感じられる。

 圧巻だったのは部屋全体が琥珀(こはく)の装飾で覆われた撮影禁止の「琥珀の間」。第2次世界大戦中のドイツ軍の侵攻による収奪で一度は消滅したが、2003年に復元された。アジアから欧州まで大きな影響力を持った王朝の権威や財力を思い知らされる。

 イサク聖堂やカザン大聖堂など、中心部には教会や聖堂も多く立ち並ぶ。タマネギのような形の屋根が印象的な「血の上の救世主教会」は、皇帝アレクサンドル2世が暗殺された場所に立つ。ソ連になり、宗教弾圧で荒廃した時期もあったが、修復で過去の姿がよみがえった。

 「北のベネチア」とも呼ばれ、多くの建物が世界遺産に指定された美しい街並みも、建設時には多くの人民が命を落とし、第2次大戦ではドイツ軍に町を包囲され多数の餓死者を出した。苦難の歴史を知ると、目にした美しさが一層、心に迫るようだった。

 ●メモ

 バルト海に面したロシア北西部にある同国第2の都市で人口は約530万人。ロシア帝国初代皇帝のピョートル1世が1703年に築いた。12年にモスクワから遷都し、ロシア革命まで200年以上の間、首都だった。ソビエト連邦時代は拠点として活動したロシア革命の立役者レーニンにちなんでレニングラードと呼ばれ、ソ連崩壊後にかつての名前に戻った。

 日本からの航空機の直行便はなく、ヘルシンキやパリなどで乗り継ぐ。今回の旅で利用したカタール経由のコースでは片道約19時間。日本との時差は6時間。

=2018/12/12付 西日本新聞夕刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]