冬の阿蘇を味わう 熊本県高森町

道の駅「あそ望の郷くぎの」から一望できる阿蘇五岳。中央の白煙が上がる場所が中岳火口付近
道の駅「あそ望の郷くぎの」から一望できる阿蘇五岳。中央の白煙が上がる場所が中岳火口付近
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「新酒とふるさとの味まつり」初日、振る舞い酒のたるの前には長蛇の列ができた
「新酒とふるさとの味まつり」初日、振る舞い酒のたるの前には長蛇の列ができた
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濃霧の中、極太タイヤが特徴のマウンテンバイクで走るガイド。気持ちよい走りが楽しめた
濃霧の中、極太タイヤが特徴のマウンテンバイクで走るガイド。気持ちよい走りが楽しめた
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絶品の醤油アイスクリームを売り出す「阿蘇マルキチ醤油 豊前屋本店」は明治3(1870)年創業の老舗の味噌・醤油醸造蔵。5代目の吉良充展社長は「もちろん、醤油もお薦めです」
絶品の醤油アイスクリームを売り出す「阿蘇マルキチ醤油 豊前屋本店」は明治3(1870)年創業の老舗の味噌・醤油醸造蔵。5代目の吉良充展社長は「もちろん、醤油もお薦めです」
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名物の「高森田楽」。ほどよく焼けたみその香ばしさが食欲をそそる。サトイモは地元特産の「つるのこいも」。形が鶴の首に似ていることから名付けられたという
名物の「高森田楽」。ほどよく焼けたみその香ばしさが食欲をそそる。サトイモは地元特産の「つるのこいも」。形が鶴の首に似ていることから名付けられたという
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 早春の郷土料理に、「町外不出」の限定酒…。かぐわしい新酒の香りが脳内をよぎり、熊本県高森町の「新酒とふるさとの味まつり」(3月10日まで)におじゃました。平成の始まりとともにスタートし、31回目を迎えたイベント。熊本地震で被害に遭いながらも、秘蔵の酒は醸され続けてきたという。「平成最後」の年の風味を堪能すべく、冬の阿蘇を訪ねた。

 まつりはシーズンオフとなる冬季に観光客を呼び込もうと町観光協会が毎年開催。銘酒「れいざん」で知られる地元の老舗蔵元「山村酒造」の新酒を味わいながら、高森の食が楽しめる。飲食店や宿泊施設など40店で提供される新酒は加熱処理をしない生酒で、品質が保てないことから「町外への持ち出し厳禁」。来なければ味わえない「幻の味」が人気を呼び、リピーターも多いという。

 山村酒造の山村弥太郎専務は「今年もおいしい酒ができました」。標高550メートルの冬の寒さと、阿蘇の伏流水がおいしさの秘密。すっきりした飲みやすさと、さらりと切れの良い口当たりが特徴で「派手さはないが、食べ物をおいしく引き立てる酒。ぜひ高森に来て味わって」。

 町中心部の観光交流センターで今月10日にあったオープニングイベント。鏡開きの後、振る舞われた新酒は、つるっと喉を通り、冷えた体を内側から温めてくれた。地元名物の和風クレープ「ふ菜やき」や高森田楽などをつまみに、思わず杯が進んだ。

      *

 せっかく阿蘇に来たならと、今冬、牧野ガイド事業を始めたNPO法人「ASO田園空間博物館」の下城卓也マネジャーの案内で、同県阿蘇市の牧野も見学した。

 専門知識のあるガイド同行を条件に、牛の放牧地や採草地として立ち入り禁止だったエリアを、トレッキングやマウンテンバイクを楽しむ場所として開放する事業。インターネットなどを通じて評判が広がり、海外からの問い合わせもあるという。

 靴の裏と自転車のタイヤを消石灰で消毒して入場したが、この日、標高1000メートルの牧野は濃霧に包まれてしまった。それでも、ふわふわした牧野の柔らかな地面を足の裏で感じ、幅広タイヤで草原を走るわくわく感は楽しめた。

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 自宅のある福岡に戻って数日。早くも“阿蘇ロス”に陥りそうな自分に気付く。

 舌の上でとろけた「あか牛」の鉄板焼き。違いに驚いた高菜の新漬けと古漬けのおにぎり食べ比べ。地元の「阿蘇マルキチ醤油(しょうゆ)」を使ったアイスクリームの上品な味わい。そして新酒の華やかな香り…。宿泊でお世話になった「休暇村南阿蘇」の天然温泉「しきみの湯」は、疲れた肌をすべすべにしてくれた。きっとこれは、日頃頑張って働く私へのご褒美。牧野ガイドの濃霧は、もう一度おいでという神様からのサインなんだ-。

 52歳のおっさんを、こんなメルヘンチックな気分にさせる阿蘇のすばらしさを再確認できた旅だった。

 ●メモ

 熊本市方面から阿蘇に向かうルートは(1)ミルクロード(2)俵山トンネル(3)長陽大橋-の三つ。「新酒とふるさとの味まつり」の問い合わせは高森町観光協会=0967(62)2233。牧野ガイド事業は「道の駅阿蘇」(NPO法人ASO田園空間博物館)=0967(35)5077。

 ●寄り道=寒暖の差が イチゴを甘くする

 熊本県南阿蘇村にある観光イチゴ狩り農園「南阿蘇岩下さんちのいちご園」は12~5月がシーズン。15アールのハウスに8種類のイチゴが植えられ、次々と赤く色づいている。自慢は、近くにある白川水源と同じ水で育てていること。「イチゴの80%は水だから、おいしくないはずがありません」。農園主の岩下直さん(64)は胸を張る=写真。

 もう一つの秘訣(ひけつ)は、標高500メートルという場所にある。寒暖の差で甘みが増すという。現在は品種「かおり野」「ゆう紅」「桃薫」が盛り。これからは「よつ星」「紅ほっぺ」などが実る。

=2019/02/20付 西日本新聞夕刊=

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