留学生2割消えた 九州私大37校の退学・除籍 受け入れ急増で「ひずみ」も 少子化穴埋め焦る大学

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外国人留学生の退学・除籍の状況について、九州の私大から本紙に届いたアンケート回答の一部。従来留学生数が多い中国に加え、ベトナムなどの国籍の記述が目立つ
外国人留学生の退学・除籍の状況について、九州の私大から本紙に届いたアンケート回答の一部。従来留学生数が多い中国に加え、ベトナムなどの国籍の記述が目立つ
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 日本で学ぶ外国人留学生は昨年、26万人を超え、過去最多を記録した。福岡市など都市部を中心に、深夜のコンビニや飲食店で働きながら通学するアジア人の若者の姿は珍しくない。

 九州の私立大学関係者から昨年、西日本新聞に電話があった。「途中退学する外国人留学生がどれだけ多いか、知っていますか」

 この人物の大学ではある年、ネパールから来た若者のうち、8割近くが中途退学したという。

 実態はどうなのか。特命取材班は九州の私立大53校、キャンパスの一部を九州に置く私立大4校の計57校を対象にアンケートを行い、2013年4月~17年秋の退学・除籍者の数について37校から回答を得た。

 驚くべき結果が出た。過去5年間に入学した留学生計4551人に対し、卒業以外の理由で学校を離れた留学生は20・3%に当たる924人。実に5人に1人に上る。退学・除籍者ゼロという大学がある一方、留学生の入学者と退学者が同数という大学もあった。

 理由について、11校が授業料を支払えないといった「経済的理由」を挙げた。「成績不振」「学習意欲の喪失」なども目立った。

 入学者数のうち3割を上回る退学・除籍者が出た長崎県の私大は「学習意欲の喪失、学納金未納などでベトナム人留学生の退学や除籍が続出したため、受け入れ数を抑制した」という。

 「世界に開かれた日本」を目指し、20年をめどに外国人留学生を30万人に増やす-。08年、福田康夫内閣がぶち上げた計画だ。本紙アンケートによると、ベトナム、ネパールからの留学生が過去5年間で3~4倍に急増した。数字上は政府の目標に近づいているが、“脱落者”が多くいる。

 募集や留学生支援の在り方に問題はないのか-。九州の私大に通っていたネパール人男性(25)と、東京で会うことができた。彼は言った。「大学の説明はうそばかり。ネパール人をばかにしていた」

 背景には、全国の大学が直面する「2018年問題」があった。

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 「アルバイトは紹介するし、大学と寮を結ぶ送迎バスもあります。携帯電話を契約する際は学校が保証人になります」

 九州の私大に通っていたネパール人男性(25)は来日前、母国で通った日本語学校で、勧誘に来た大学職員からそう説明を受けたという。夢は貿易関係の仕事に就くこと。授業料や手数料など留学費用計約200万円は現地で家を買える高額だが、何とか工面した。

 実際には、アルバイトの紹介はなかった。大学近くに働ける場所は少なく、生活費で貯金は消えた。寮には入れたが、送迎バスは1日わずか2本。大学が携帯電話契約の保証人になってくれることもなかった。

 大学の相談窓口には、韓国、中国人の職員はいてもネパール人はいない。「相手にされていないように感じた」。一緒に留学したネパール人仲間と毎日話すようになった。「みんなでやめてどこかに行こう」

 ついに2人が退学した。来日費用を取り戻そうと、審査結果が出るまで就労が認められる難民申請の手続きを行い、東京で働き始めた。追随者が次々と出た。

 仲間29人のうち卒業したのは、男性を含めてわずか6人だけだったという。

     ■

 生活習慣の異なる異国で、言葉の壁もある。男性の証言が全てではないかもしれない。ただ、18歳人口の減少に大学が危機感を強めていることは間違いない。

 国立社会保障・人口問題研究所によると、1990年代前半に200万人を超えていた18歳人口は近年、120万人台で推移していたが、2018年以降は減少傾向が進み、32年には100万人を割り込むと予想される。いわゆる「2018年問題」と呼ばれる。

 若者が減れば、大学経営への影響は避けられない。既に閉校を決めた例もある。少子化であいた穴を埋めるように、大学は今、留学生の獲得に走っている。

 佐藤由利子・東京工業大准教授(留学生政策)は「地方の大学の多くは経営難で、授業料を免除してでも定員を満たしたい思惑がある。授業料を払えなくなる可能性がある留学生を入学させるなど、一部にいいかげんな大学もある」と指摘する。

 九州のある私大職員によると、国の私学助成金は学生数によっても額が変わる。「算定基準となる5月時点で在籍していれば問題ない。面接せずにネパール人を受け入れたこともある」

 仲介ビジネスも生まれている。特命取材班は会員制交流サイト(SNS)を通じ、九州に住む30代のネパール人男性と知り合った。親族が大学に、留学希望の若者を仲介しているという。「九州のある私立大は1人当たり10万円を出すよ」

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 元留学生たちは大学をやめた後、どうしているのか。手掛かりの一つは、難民申請の急増だ。

 法務省によると、10年に1202人だった申請数は17年、約1万7千人に達する見込み。難民と認定されるのはわずかで、16年は28人にとどまる。就労目的の「偽装申請」が横行しており、元留学生も多く含まれているとみられている。

 審査期間は長ければ数年単位。その間、就労時間の制限はない。それらの若者たちが事実上、東京五輪特需に沸く首都圏の建設現場、担い手不足に悩む農業の現場を支えている。異国の若い労働力に依存する日本社会の現実が浮かぶ。

 ネパール人男性は言う。「みんな日本で勉強して就職したいと思って来た。最初から偽装難民になろうなんて思っていない」

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