「ヤミ民泊」隣の家で 福岡市2000件超、戸建てでも 訪日客向け住民困惑

「民泊」住宅に宿泊した香港からの旅行客たち=昨年12月、福岡市早良区(写真の一部を加工しています)
「民泊」住宅に宿泊した香港からの旅行客たち=昨年12月、福岡市早良区(写真の一部を加工しています)
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「民泊」住宅の雨どいには暗証番号で開くキーボックスが付いていた
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 外国人観光客の急増に伴い、無許可の「ヤミ民泊」が九州の都市部で増えている。特命取材班に寄せられた情報によると、マンションだけでなく、最近は新築の一戸建てが立ち並ぶ住宅地でも横行しているという。その実態とは-。

 福岡市早良区の閑静な住宅地。「隣の家が民泊をやっています」と70代男性が教えてくれた。いつもは無人。雨どいに暗証番号で開くキーボックスがぶら下がっており、外国人宿泊者は自分たちで鍵を取り出す。

 記者が訪れた日、スーツケースを持った男女が出てきた。英語で声を掛けると「8千円、もう払ったよ」。韓国から4日間の九州旅行。何度も日本に来ているという女性は「いつもはホテル。今回は両親と祖父母が一緒なので一戸建てが快適と思った」。インターネットで見つけたという。

 近所の30代夫婦は、たばこの吸い殻のポイ捨て、放置されたごみのにおいが気になり、苦情を手紙にしてこの家の郵便受けに入れた。すると、ふた付きのごみ箱と吸い殻入れがすぐに置かれた。「騒音など実害はないんです。子どもが小さいので不安はありますが」

 70代男性は眉をひそめる。「火の不始末が心配。密集した住宅地での民泊はいかがなものか」

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 料金を取って繰り返し人を泊める行為は旅館業に当たり、許可が必要。福岡市ではホテル不足もあってマンションの空き部屋などを利用した民泊が急増している。大手民泊仲介サイトに掲載された施設は昨年12月時点で約2200件。ほとんどが無許可とみられる。

 早良区の住宅の持ち主は市内在住の女性だった。取材に「買ったけれど、家庭の事情で引っ越せなくなった。今は知人に貸しています。近所の人が嫌がるから、民泊はやめてと伝えています」。知人の連絡先は教えてもらえなかった。

 さらに調べると、持ち主の知人は、複数の民泊を営業する業者だった。取材班はこの業者が提供する博多区のマンションの一室に、客として泊まってみた。

 スマートフォンで予約したが、半額割引中だったはずなのに、請求額は1泊分の倍近い9千円台。電話で問い合わせると「ワタシ、ワカリマセン」と片言の日本語。話がかみ合わない。

 当日は暗証番号付きの郵便受けから鍵を取り出し、11階の部屋に入った。1LDKに冷蔵庫、テレビなどがそろう。説明文は中国語と英語。災害時の避難経路などを示す表示はない。

 夜、ドライヤーが故障していることに気付いた。連絡すると翌日、新品を持って現れたのは経営者の中国人男性。「半年ほど前から民泊を始めた。中国からの旅行者が多いし、留学の下見に来る若者もいる」と流ちょうな日本語を操った。なぜ無許可なのか。「旅館業の審査は難しい。新しい法律ができたら届け出するつもりで行政書士に相談しています。日本が好きだから心を込めて頑張りたい」

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 新しい法律とは、6月に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)のこと。住宅地や無人の施設での民泊営業を、年間180日間を上限に認める。「観光立国」は日本政府の金看板。人口減少の時代、東京五輪も控えて観光振興の受け皿づくりへの期待は大きい。

 半面、外国人観光客を歓迎しつつ、防犯や騒音などの面で民泊に不安感を抱く人たちもいる。東京都大田区が民泊を制限する条例を制定するなどの動きもあるが、政府は過度の制限には反対の立場だ。新法によって無許可営業が減り、住民の漠然とした不安解消に向かうかは見通せない。

 先の中国人男性は早良区の住宅での民泊について、区役所に「友人たちを無料で泊めた」と説明したという。市職員は「営業実態を確認するのは難しい。料金が発生していなければ旅館業に当たらず、それ以上指導できない」と話した。

=2018/02/26付 西日本新聞朝刊=

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