「ここに9発落ちた」不発弾、住宅街に眠る? 証言のみ、自治体は対応に及び腰

長崎県大村市で昨年9月に行われた不発弾の撤去作業。九州7県で陸自が処理した不発弾は1958年度以降、1万9288件に上る
長崎県大村市で昨年9月に行われた不発弾の撤去作業。九州7県で陸自が処理した不発弾は1958年度以降、1万9288件に上る
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 「地中に眠る不発弾の上で市民が生活している」。鹿児島県いちき串木野市の男性から、特命取材班にメールが寄せられた。場所は住宅密集地。73年前の夏に爆弾が落ち、放置されているという。なお残る戦後処理の問題が見えてきた。

 「ここに9発の爆弾が落ちたんです」。男性(85)が、JRの駅にほど近い住宅密集地に案内してくれた。

 1945年8月13日午後2時ごろ。13歳だった男性は、上空に米軍の大型爆撃機B29の編隊を見た。「シュー」。爆音に驚き畑の中に身を隠していると、巡回してきた在郷軍人が「爆弾が投下された」と告げた。自宅から約500メートル離れた畑に、直径約15メートル、深さ約5メートルのすり鉢状の穴が二つ、直径深さとも約1メートルのドラム缶型の穴が七つ開いていた。「何か音がしたら逃げろ」。兵隊からそう言われたのを覚えている。

 「串木野郷土史」によると、8月12日に市街地の80%が焦土となる空襲があったというが、翌13日の記述はない。男性は「被害を知る人は亡くなってしまったが、空襲の翌日だった」と言う。当時畑だった土地には民家やアパートが立ち並ぶ。「何かの拍子に不発弾が刺激を受け、爆発してしまわないか心配です」

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 太平洋戦争末期、日本各地は米軍の空襲に遭った。九州大大学院工学研究院の水永秀樹准教授(物理探査学)は「不発弾は空襲があった地域や飛行場だった場所で、偶然発見されるケースがほとんど」と話す。

 沖縄県糸満市では2009年、水道管敷設工事中に削岩機が不発弾に接触し爆発、作業員ら2人が重軽傷を負った。陸上自衛隊西部方面総監部によると、九州7県で陸自が処理した不発弾は1958年度以降、今年1月までに1万9288件、約846トンに上る。

 対応が難しいのは、証言だけで不発弾の存在を裏付ける記録がない場合。総務省によると、マンション建設を前に地元住民を集めた説明会で「この辺に爆弾が落ちた」と戦争体験者が証言する例は少なくない。

 宮崎市は12年、市内の民有地に「米爆撃機B29が爆弾を落とし、爆発しなかった」との市民3人の証言を受け、「鉛直(えんちょく)探査」と呼ばれる磁気探査を実施した。

 自治体が鉛直探査を行う場合、総務省が費用(200万円以上対象)の50%を交付する。見つからなかった場合の交付額は費用の25%に減額されるため、何らかの確証がないと自治体は及び腰になりがちだ。「3人の証言」を受けて実施した宮崎市の場合、約1200万円かけて探査したものの、見つからなかった。

 交付制度の利用は昨年度1件だけ。見つかった不発弾の処理費用を誰が負担すべきかを明示した法令はなく、地権者と自治体の間で訴訟も起きている。

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 探査する場合、土地所有者などの承諾も必要だ。男性は住民の一部に訴えているが、探査を求める声は上がっていない。住民の女性(64)は「特に不安に思わない」と話した。

 いちき串木野市は探査を行う予定はないという。中屋謙治副市長は「男性がおっしゃっているので(爆弾の投下は)あったと思う」。その上で「土地の使用形態が変わる中で見つかり、撤去されたと考えるのが自然。ただ、その周辺で大規模な工事を行う際は慎重に進めるよう、関係機関と情報共有したい」と話した。

=2018/04/04付 西日本新聞朝刊=

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