不法埋め立て、市もお手上げ 福岡・春日の産廃投棄地 「環境改善」協定を盾に

地権者の男性の小屋は周囲を埋め立てられ、使用することができなくなった。小屋の左側にあった別の地権者の土地は数メートルの高さまで土砂が積まれ「どこが自分の土地か分からない」状態に=福岡県春日市
地権者の男性の小屋は周囲を埋め立てられ、使用することができなくなった。小屋の左側にあった別の地権者の土地は数メートルの高さまで土砂が積まれ「どこが自分の土地か分からない」状態に=福岡県春日市
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2004年に締結された協定書には、地権者でつくる協議会とゴルフ場側、春日市が「互いに協力して環境改善を図る」とされている
2004年に締結された協定書には、地権者でつくる協議会とゴルフ場側、春日市が「互いに協力して環境改善を図る」とされている
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産業廃棄物を巡る問題が長年解決しないままとなっている福岡県春日市の山林。ゴルフ場になる予定の場所には太陽光パネルが設置され、開発が進む気配もない
産業廃棄物を巡る問題が長年解決しないままとなっている福岡県春日市の山林。ゴルフ場になる予定の場所には太陽光パネルが設置され、開発が進む気配もない
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 福岡市のベッドタウンとして人口が増え続ける福岡県春日市。新興住宅街に隣接する山林で「私有地が不法に埋め立てられている」という情報が寄せられた。市も黙認状態という。背景を追うと、1枚の「協定書」を都合よく解釈する開発業者と、業者を指導できない行政の姿が浮かび上がった。

 ヘリで上空から市街地を見下ろしながら進むと、木々が伐採され地面がむき出しになった山が現れた。ゴルフ場らしきものも見える。場所は同市上白水。すぐ横に住宅地や商業地も広がる。地上に降り、地権者という男性数人に案内してもらった。

 山肌はえぐれ、土砂が高く盛られた場所もある。男性は「元の地面より数メートルも高くなった。どこが自分の土地か分からない」。別の地権者は小屋を残し、周囲を埋め立てられた。小屋内には雨で土砂が流れ込み、置いていた農機具も使えなくなったという。

 工事を進めているのは、この山林にコースがあるゴルフ場「九州カンツリー倶楽部」の経営会社。取材に応じた同倶楽部会長の男性は「市からも地権者からも許可を得ている」と話し、違法性を全面否定した。どういうことなのか。

 発端は廃車など産業廃棄物の山林への不法投棄だった。1980年ごろには手が付けられないほどの量になっていた。山林の地権者は200人以上に分かれ、土地の境界もあいまい。被害者が特定できないなどの問題もあり、行政も20年近く何の手だても打てないまま“放置”されてきた。

 長年の懸案に一肌脱いだのがゴルフ場の経営会社だ。平地にもコースを持っていた同社は平地側を民間業者に売却し、その費用で山林の地権者から土地を買収。産廃を撤去して山側にコースを移設する計画を提案した。産廃に悩まされた地権者側と市はこれに乗り、3者で2004年、「協力して環境改善を図る」とする協定書を交わした。

 この計画について、連絡がついた地権者約107人のうち、賛成したのは71人。地権者全体の3分の1にとどまるため、協定書には「工事にあたって地権者の同意を得ること」と明記された。ゴルフ場側は協定書を元に工事を進め、対象の23万平方メートルのうち大部分の産廃撤去を終えた。

 残るのは、土地の買収に応じなかった男性らの土地(約7千平方メートル)。見える範囲に産廃はないが、市によると地中に埋まっている可能性がある。掘り起こして取り除き、埋め直さなければならないが、ゴルフ場側はこうした場所にも土砂を次々に入れ、男性らの土地も埋め立てられてしまったという。

 これに対し、ゴルフ場側は「協定書で総意として同意は取れており、問題ない」と反論。土砂の積み上げについては「産廃投棄前の山の形に戻し、木々を再生させてゴルフ場にする約束。実行しているだけ」と主張する。だが、こちらは協定書に記載はない。

 協定を交わした春日市もこうした現状を問題視はするものの「利害関係者はあくまで地権者とゴルフ場。立会人という立場で参加しているだけで市の事業でもなく、指導できる法的権限は何もない」と説明する。大量の土砂搬入は災害の危険も招きかねないため、市は苦肉の策で県土砂条例での規制を求めるが、県は「協定書がある以上、市が指導すべきだ。地方公共団体が行う事業は条例の枠外だ」と応じていない。

 被害を訴える地権者はゴルフ場側への刑事告訴や訴訟も視野に入れる。今のところ解決の糸口は見えない。

=2018/04/20付 西日本新聞夕刊=

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