同じシングルマザーなのに…「非婚の母」に冷たい税制 「不公平」の指摘にも改正先送り、なぜ?

北部九州の40代女性は、非婚の母にも寡婦控除が適用されるよう税制改正を求めるインターネット上の署名活動に参加しているという
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 同じシングルマザーでも、結婚せずに子どもを産んだ「非婚の母」だけが税金面で不利な状況に置かれている。年間所得から原則27万円を差し引いて所得税を計算する「寡婦控除」の対象に含まれないためだ。厚生労働省の調査では、非婚の母の年間所得は母子世帯の平均より23万円も低い。「不公平では」との指摘もあるが、税制改正は先送りされてきた。どうして?

「死別・離婚」には「寡婦控除」 年間所得に大差

 特命取材班に声を寄せたのは、北部九州に住む40代女性。1人で育てる小学生の子どもは病気がちで、フルタイムでは働けない。月収は交通費も入れて12万円ほどで、「参観日に来て」と言われても給与が減るため難しい。「子どもにつらい思いをさせている。控除が適用されれば少しは楽になるのに」と嘆く。

 寡婦控除は1951年、戦争で夫を亡くした女性の救済策として創設された。今では夫との「死別」だけでなく、「離婚」にも適用されている。婚姻歴で判断されるため、子どもがいないまま離婚し、その後「非婚の母」になっても控除対象になる。

 厚労省の2016年調査では母子世帯になった理由は、「離婚」79・5%▽「死別」8%▽「非婚」8・7%-だった。死別が36%を占め、非婚が5%だった83年調査と比較すると、家族の在り方の変化がうかがえる。母子世帯の年間就労所得(16年)をみると、離婚の205万円に対し非婚は177万円。死別と比べても約10万円少ない。

与党に根強い「非婚の出産奨励=家族の在り方崩壊」論

 寡婦控除は、課税所得を基に算出される保育料などにも影響する。こうした格差を軽減しようと、一部の自治体は非婚の母も「寡婦」とみなし、保育料などを減額してきた。国も16年に公営住宅の賃料などを決める際にみなし適用を始め、今夏からは保育料などの算定にも導入を決めている。

 それでも、所得税や住民税が多く徴収される現状は変わらない。例えば、年間給与収入が200万円の母子世帯では、寡婦控除の有無で約2万円の差が出る。非婚の母である30代女性は「同じ額を稼ぐのに何日もかかる。税金が安くなれば子どもと過ごす時間を増やせるのに…」と漏らす。

 与党内では、公明党が非婚の母にも控除対象を広げるよう主張してきたが、昨年末に決まった18年度税制改正大綱には盛り込まれなかった。自民党内に「非婚の出産を奨励することになり、家族の在り方が崩れる」といった保守的な意見が強いためとされている。

「変えるべき」8割超 「子どもの貧困」懸念の声も

 この問題について、特命取材班は4月上旬、無料通信アプリ「LINE(ライン)」でつながっているフォロワー約1300人にアンケートを実施。10~70代の391人から回答を得た。非婚の母が寡婦控除の対象外であることを知らなかった人は240人(61%)に上り、8割を超す324人が「変えるべきだ」とした。一方で、3割超の人は「家族の在り方に影響を与えかねない」とする意見を「理解できる」とした。

 意見の中には、「あえて結婚しない人や、そうでなくても非婚の母になった経緯は一定程度本人の責によることも考えられる」として、寡婦控除の不平等性だけを尋ねた質問項目に疑問を呈する人もいた。

 非婚の母になる経緯は人それぞれだ。紹介した2人の女性はいずれもドメスティックバイオレンス(DV)の被害者。暴力から逃げた時には命を宿しており、おなかの子に罪はないからと産む決断をしたという。婚姻前に事故などでパートナーを亡くし、非婚の母になる人もいる。

 同じひとり親でも男性が受ける「寡夫控除」には収入制限があるなど、男女間で見ても公平な制度にはなっていない。アンケートに答えた福岡市の60代女性は「子どもの貧困にも関わる問題。子育て中で収入が少ないなど条件が同じなら、平等に適用するべきでは」と提案した。

=2018/04/30付 西日本新聞朝刊=

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